2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年1月16日

 エコノミスト誌11月29日-12月5日号は、中国が雲南を東南アジアの新たな経済開発の拠点にしようとしている、と報じています。

 すなわち、2013年に、習近平は、高速鉄道・自動車道・パイプライン・港・光ファイバーケーブルを敷設して、いにしえのシルクロードを再活性化すると発表し、新たな開発攻勢が始まった。その経路として想定されたのが、(1)中央アジアから中東を通るルート、(2)中国沿岸部から発する海上ルート、(3)雲南から東南アジアに伸びるルートである。

 習は、アジアインフラ投資銀行への500億ドルの拠出や400億ドルのシルクロード基金の創立を約束するなど、資金的手当ても行っている。既に、雲南では道路・鉄道等の建設が精力的に進められている。国境を越えた、パイプラインや光ケーブルなどの輸送・通信網も改善されつつあり、中国とラオス、ミャンマー、ベトナム間の貿易量は1990年代以降、ほぼ毎年拡大してきた。

 もっとも、こうした中国の経済攻勢は、タイやミャンマーといった、周辺諸国の不安定な政情によって足を引っ張られる可能性がある。これらの国と中国を結ぶ鉄道建設計画の先行きは不透明である。

 そして、周辺諸国には中国への警戒心がある。一つは経済的なもので、こうした経済関係から大きな利益を得るのは中国だという不満や、大量の中国製品が流れ込めば、自国の弱体な産業は壊滅しかねないという不安がある。

 しかし、これらの国がもっと恐れているのは、中国の狙いは市場の拡大に伴う勢力圏の拡大にあるのではないかということだ。中国の台頭は大陸部では平和的だが、南シナ海では強硬な行動を伴ってきた。貿易を介するにせよ、武力を介するにせよ、中国の目的は地域への支配力拡大にあるように見える。経済的な対中依存度が増せば、周辺諸国は領土問題等で中国に歯向かわなくなるという計算である、と報じています。

出典:‘Stretching the threads’(Economist, November 29, 2014)
http://www.economist.com/news/china/21635061-impoverished-south-west-china-seeks-become-economic-hub-stretching-threads

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 ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイといった内陸の中国近接国は、中国がとりたてて何もしなくても、中国経済圏に引き寄せられがちです。まして、中国がこれら諸国に対し、道路、鉄道、通信網の建設といった開発攻勢をかける場合、その傾向はさらに強まることになります。


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