創業のルーツにメスを入れた三菱重工
長崎造船所の造船部門を分社化することについて宮永俊一社長は「造船業をやめるつもりはないが、思い切った選択と集中を進め、立て直しを図りたい」と強調する。
だが、新設する2社の先行きも不透明だ。LNG船建造会社はLNG船特需によって当面、フル操業が維持できそうだが、特需が一巡するとどうなるのか。「業界再編の話も出てくるのではないか」と、業界関係者は一様に指摘する。現に造船重機大手各社は2000年代始め、造船部門を本体から切り離す分社化が相次いだが、実は「業界再編に備えてのものだった」(村上彰男川崎重工業常務)という。
一方の船体ブロック製造会社にしても一人立ちは難しい。「本来は(瀬戸内地区に多数立地している)鉄工所が手掛ける下請け仕事。三菱は今治や名村、大島など瀬戸内・九州地区の造船所からの受注を期待しているのかもしれないが、(従業員の賃金が業界トップと)コストの高い三菱に競争力があるのか」と、疑問視する声も強い。
こうした中、考えられるのが、建造量では業界トップの今治との思い切った提携だ。三菱と今治は、1970年代に旧運輸省が描いた業界再編構想では技術面を中心に資本・業務提携関係にあり「今治は三菱から造船技術者を中心に多くの人材を受け入れてきた」(業界関係者)という経緯もあって、元々、関係が深いのだ。それに最近ではLNG船の設計・販売の合弁会社を設立、建造についても協業しているとみられる。この提携が艦船を除く造船分野に広がらないとも限らない。
だが、オーナー経営が持ち味の今治と、旧財閥の三菱では社風も歴史も大きく異なる。業況が安定している中で、思い切った事業統合に踏み切れるのか、注目されるところではある。
スピード感を持って動く専業中手各社
一方、専業中手を中心に業界再編を目指す働きも始まっている。再編を通じて保有資源の集中と規模拡大による競争力の強化を目指そうというものだ。その受け皿として期待されるのが13年4月、造船、舶用機器、海運など16社・機関が参加して設立した「マリタイムイノベーションジャパン」(MIJAC)だ。