「海事関連のオールジャパンを結集して世界トップレベルの技術開発を目指す」(信原眞人社長)のが狙いで、造船業界からは今治造船、大島造船所、サノヤス造船、新来島どっく、常石造船の5社と、瀬戸内地区に立地する主な専業中手が揃って参加している。
大手に比べて開発力の劣る中手造船を東京大学など造船業に関係の深い国公立大学6校の協力も得て、レベルアップさせようというものだ。開発のテーマは省エネ船の開発や海洋エネルギーに関する研究など盛りだくさんだが、各社の経営者や開発陣の交流につなげていく狙いもある。
16年ぶりにドックを新設する今治造船
専業中手でも将来の生き残りを目指して個々の動きが一段と活発になっている。今治造船は今年1月、世界最大級のコンテナ2万個積み大型コンテナ船11隻を商船三井や台湾のエバーグリーンなどから受注。これまで韓国勢が独占していた大型コンテナ船市場に参入する。このため丸亀工場(香川県)に400億円を投じて大型ドックを新設する計画をぶち上げた。国内でドックを新設するのは、同社の西条工場(愛媛県)以来、16年ぶりだ。
また、多度津工場(香川県)を今治造船に売却、海外への展開に力を入れている常石造船(広島県福山市)も本社工場のマザー工場化に力を入れている。老朽化した機械設備やクレーンを大型化して効率的な生産体制を構築、フィリピンや中国など海外展開する拠点工場に普及させるのが狙いで「今年度の投資額は数十億円に上る」(河野健二社長)見通しだ。続いて東南アジア地区に3番目の拠点工場を開設する方針も打ち出しており、中国の合弁工場を一大拠点化している川重同様、海外シフトに力を入れる。
さらに佐世保重工業を傘下に収めた名村造船所も老朽化した「設備の更新投資を進める」(名村建介社長)方針を打ち出しており、業況好転の中で各社の動きは活発だ。
再編に向け機運が盛り上がったかに見える造船業界だが、再びつかの間の好況が水を差すことになりそうだ。中手はほとんどがオーナー経営で、立地先は企業城下町を形成している。「オーナーが家業を捨てる決断がはたしてできるのか」(業界関係者)という声が強いのも事実なのである。
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