Wedge REPORT

2015年7月16日

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連邦最高裁判決後の改正とキーナン・シナトラ事件

 最高裁判決が出された後、ニューヨーク州に限らず多くの州が包括的な犯罪反-利益法へとサムの息子法を衣替えした。また、2つの点でさらなる限定が加えられた。第1は、犯罪に関する些末な記述をサムの息子法の適用から除外することである。話の中核部分に犯罪が関わる場合に限定したり(バージニア州)、枝葉末節に関わる部分での犯罪の記述を適用から除外したりした(カルフォルニア州)。第2は、犯罪も被害者の死亡や身体への傷害をもたらす重罪に限定されたことである。

 しかし、このような限定にもかかわらず、改正されたサムの息子法が合憲であるかどうかは、今もって不透明である。上記のような改正を行ったカリフォルニア州法は、州最高裁で違憲と判断されている。

 1963年、事件当時高校生だったキーナンは、フランク・シナトラの息子を誘拐し、身代金を奪う計画を立てて実行した。その後逮捕され有罪となったキーナンは、35年後にロサンジェルスのレポーターのインタビューに応じ、映画会社と映画権に関する契約を結んだ。契約額は48万5000ドルであった。これに対して、シナトラの息子がカルフォルニア州のサムの息子法に基づき裁判を起こした。カリフォルニア州最高裁は、改正法もなお限定が不十分であり、表現の自由を侵害するとして違憲と判断した。この事件は連邦最高裁に上訴されたが、最高裁は上訴を受けつけなかった。

サムの息子法の適用の拡大

 その一方で、サムの息子法は、別な面で適用範囲を拡大している。第1は、直接犯罪に由来しない利益も、犯罪被害者の補償の原資に組み入れられるようになったことである。たとえば、有罪判決を受け服役した者が、刑務所において不当な待遇を受けたことを理由に州などを相手取って損害賠償を請求し、勝訴した場合、多額の賠償金が彼に支払われることがある。

 一般的なサムの息子法では、第三者が介在した時点で、元々の犯罪と利益との因果関係は切れてしまうと考えられる。そのため、賠償金は犯罪から得た利益と解されない。2000年以降、犯罪とは関係なく得た犯罪者の資金や財産も、犯罪被害者補償の原資に含める法改正がいくつかの州で行われた(ニューヨーク州)。

 第2は「犯罪の果実」の拡大である。凶悪犯が一部の者の「カリスマ」に祭り上げられることがある。そのため、犯罪の「記念品」や犯罪者と関係するその他の物品がその悪名によって高い値がつけられ、このようなおぞましい取引によって犯罪者が利益を得る場合がある。そこで、犯罪の悪名によって増加した価格分を没収する制度を新設する州も出てきた(カルフォルニア州)。

 近年この問題は、インターネット・オークションの発展により深刻化している。一部の州では、悪名から利益を得た犯罪者だけでなく、犯罪者と関係する手紙や写真、果ては犯罪者の髪の毛や爪などをオークションで売って儲けた第三者にまで適用が拡大されている(テキサス州)。

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