青森県の例で言えば、最も苦しんでいるのは青森山田高等学校を運営する学校法人青森山田学園であろう。甲子園大会、全国高校サッカー選手権大会、全国高校駅伝大会の常連である青森山田高校。“スポーツ強豪校”という称号を手に入れるために大きな貢献をしてきたのが特待生であるが、実は、同校は、2014年4月には特待生としての入学者をピーク時(約140名)の約3分の1となる約50名にまで絞り込んだ。
特待生に頼りすぎたことの弊害
これは特待生に対する経費負担が重く、2010年3月期以降、2015年3月期まで6期連続赤字決算となっていた学校法人の経営再建策である。現在、同法人は少子化の影響もあり生徒が集まらず、採算割れの状態が続いている。2006年3月期に50億円以上あった年収入高は、2015年3月期には約30億8000万円にまで減少した。経費の支払い先に対して約速通りの支払いが出来ずに条件変更をして支払うことも珍しくない状態が続いているのである。部活動の合宿等で利用される旅館からは「支払いが約束通りに行われないから、受け入れたくない」との声が上がるくらいだ。
そもそも、いくらスポーツで知名度を高め生徒数を増加させるという戦略をとっていようとも、1学年300名程度の高校に毎年100名以上の特待生(つまり3分の1が特待生)が入学していたことが異常。その異常さにようやくメスを入れることとなったわけだが、“時既に遅し”の様相を呈している。2013年3月末で同法人が経営していた青森大学大学院、青森短期大学を閉校。青森県内最大規模の学校法人は、特待生に頼りすぎたことで破綻の危機を迎えていると言えよう。
甲子園出場校はどうだろうか。意外なところでは、例えば、明徳義塾(高知県)が厳しそうだ。年収入高こそ2014年3月期で約21億円と前年度比微増となっているが、全校生徒約900名のうち約300名が留学生、または奨学生という、まさにスポーツエリート校ビジネスモデル。
当然、「スポーツコース」に力を入れており、設備・人的投資を積極的に行っている。野球、サッカー、ゴルフ、相撲などの分野で人材を輩出している。そんな同校であるが、財務内容をみれば、国や高知県からの補助金に対する依存度も高く、全収入のうち3分の1程度を占める。実は、補助金がなければ、採算が取れなくなるのは明らかである。
国立社会保障・人口問題研究所によると、2040年の総人口はすべての都道府県で2010年を下回る。少子化が進み、0歳から14歳までの人口は2010年(全国)を100とすると2040年は63.7。都道府県別にみると、青森県46.6、秋田県47.0など地方の減少が顕著(東京都は71.4)。この少子化の影響をまともに受けるのは学校法人である。
収益減少することが避けられないなか、他校と差別化をしてなんとか生徒を集めなければならない。その差別化策の一つがスポーツによる知名度の向上であるが、スポーツエリート校ビジネスモデルを目指しながら、倒産した学校法人もある。少子化はビジネスモデルの変更を迫る。