断食道場4日目
「死の四重奏とのお付き合い」
今日の朝の目覚めはいつもと一緒だが、この日も5時半から「小原庄助さん」(朝寝が好きな民謡の人物)を決め込んだ。
気がついたら2時間も温泉とサウナに入っていた。これも毎日続くと、結構キツくてサウナは5分単位で3回も入ると断食のせいか頭がふらついてくる。7時半からの石原ドクターの診察があるが、露天風呂からゆっくり森を見ながら、フィトンチッドを心ゆくまで浴びた。診察後の8時からは人参ジュースを頂いて、小休止の後、女房と一緒に近くにある「一碧湖」まで散歩をした。一碧湖の1周は約2キロだがぶらぶら回ると1時間ぐらいはかかる。夕方には人の姿が消えたゴルフコースを散歩する。毎日のこんな軽い運動が身体と心には大変良い影響が出てくる。
4日目には空腹感はまったくといってよいほどなくなってきて、朝8時の3杯の人参ジュース、10時の具のはいってない味噌汁で塩分の補給、12時にまた3杯の人参ジュース、3時に生姜のたっぷり入ったお茶を一杯、午後の5時にはまたコップ3杯の人参ジュースと何も考えずに時間だけが経ってゆくといった感じだ。
断食療法は何も食べない、お金は掛からない、時間だけはいくらでもあるから、日本の医療制度について色んなことを考えてみた。
行きつけの病院ではまず内科で高血圧の薬を処方される。糖尿病内科に回されて血糖値を下げる薬を追加される。腰痛や肩こりの為には形成外科で血流促進用の薬を処方される。泌尿器科では利尿作用の薬や前立腺肥大の改善の薬を処方される。病院の縦割り組織のためにたらい回しにされている印象もある。
僕の場合、病名ごとの対症療法のために専門医師により、薬の数が増えていって気がついたら毎日飲まなければならない薬の数は10種類ぐらいに増えていた。しかも、糖尿病は悪化する、血圧は下がらない、コレステロールは落ちない、相変わらず肩こりと腰痛に悩まされる状態は変わらないのだ。
35年前に約13万人しかいなかった日本のお医者さんの数は今や29万人にまで膨れ上がっている。医療の進歩も目覚ましく日本の医療費は年間40兆円になっている。がんによる死者の数は約13万人から35万人に激増し、心筋梗塞や脳梗塞も同様に年々増える一方である。
日本の国の借金総額は現在1167兆円である。これ以上医療費の増加がない前提で30年分の医療費が1200兆円であるから30年後には日本の借金は倍増することになる。日本の医療保険制度は世界にはない素晴らしい制度だが、実は国家財政を窮地に追い込んでいるのもこの医療制度である。
消費税を1%上げると税収は2兆円になるが、仮に消費税を10%にしても税収は20兆円にしかならない。それなら年間使っている40兆円の医療費を半分にした方が日本国の財政の健全化には良いという発想もある。
お医者さんが増えて、患者さんは薬漬けになって、寝たきり老人が益々増えているのが日本の医療の現場である。この手厚い医療制度は本当に増え続ける医師と死なせて貰えない重篤な患者にとって、幸せなことなのだろうか。
一方、毎年約1兆円の医療費が増加しているのが日本の状況である。1兆円といってもイメージが沸かないが、早い話、毎日1億円を360日浪費して30年使い切るとやっと1兆円規模である。私に言わせると恐ろしいほどの「死に金」が浪費されているようにしか見えない。
アメリカなどでは医療保険制度が貧弱だから貧乏人は安心の出来る医療を受けることができない。救急車で運ばれた患者が「実はお金がない」と云ったら救急車から降ろされたという笑えない現状がある。日本では医療保険制度にタダ乗りする患者もいれば、金儲けのために医療を利用する医者もいる。
断食道場は時間だけはいっぱいあるからこんなことばっかり考える毎日が続いている。さて、断食の前半戦があっという間に過ぎてしまった。減量は好調で死の四重奏(糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満)は改善しつつある。毎日の断食生活も女房と長男のお蔭で楽しく時間つぶしができた。やはり、話し相手がいるのといないのとでは大きな違いがある。だが、長男は仕事があるので3日目で帰ってしまった。女房の方も用事があるといって5日目で帰るといっている。
仕方がないので話し相手もいない孤独な断食に耐えながら後半戦が無事に終わってくれたらと祈るばかりである。
次回の“断食道場体験記パート②”はサラリーマンのなりやすい病気の話題と断食生活の楽しいイベントについて書いてみたい。
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