名門ハーバードのデータも意外に大雑把?
「身体に悪い」という数々のエビデンスが出ているとされるトランス脂肪酸ですが、実際の研究報告を詳しく見ていくと、少々、驚くことがあります。それは、根拠となるすべての疫学調査において、トランス脂肪酸摂取量が自己申告に基づいていることです。「トランス脂肪酸は危険である」という議論は、1990年頃、アメリカの名門ハーバード大学が8万人以上を対象とした大規模調査の結果を発表したあたりからヒートアップしてきましたが 、この研究での使用データも自己申告によるものでした。
そういえば、私も人間ドックを受けた際、具体的な献立を週平均で何回とるのかといった非常に細かい問診票をもらって面倒に思い、とんかつ5回、ラーメン5回、ピザ10回などと適当な回答をし、問診担当のナースに「とんかつ5回ねぇ…」と、睨まれたことがあります。もちろん、被験者の全員が私のように不真面目な回答をするわけでもないし、自己申告に基づいたデータであっても疫学調査としてある程度の意味は持ちます。しかし、血中濃度などの「測定によるデータ」と比較すれば、アンケートによるデータの信頼性が低いのは否めません。
「トランス脂肪酸を多く摂取した」とされる人々は、現実の世界では、単にトランス脂肪酸が多く含まれるファストフードや菓子類を多く摂取している人。その人たちに心筋梗塞のリスクが高いからと言って、体に悪かったのは、本当にトランス脂肪酸なのか、それらの食品に共通して含まれている別の成分なのか、まったく別の体に良い食べ物を食べていなかったからなのかは、はっきりしません。
トランス脂肪酸単体での影響を知ろうとすれば、トランス脂肪酸以外の条件をそろえたうえで、心疾患の発症率を比較する必要がありますが、当然、そういった研究を人間で行ったものはありません。