2025年4月9日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年3月4日

 2025年2月13日付のEconomist誌の社説は、トランプ政権誕生前夜の混迷を好機と捉え、中国はグローバル・サウス諸国が台湾に背を向けるよう静かな外交を積極的に展開していると述べている。

(Sean824/gettyimages・ロイター/アフロ)

 トランプ政権は、数週間の内に、関税の導入、援助の削減、ウクライナ戦争をめぐるプーチン大統領との協議開始等、驚異的速度で重要な外交を実行している。

 しかし、米国にとって最大の長期的課題は中国であり、中国は、大統領選や新政権誕生で米国が内政問題に追われている時期を好機と捉え、自らの外交的立場の確保に着々と布石を敷いている。中国は、密やかに、中国の施政に服しない台湾に世界が背を向けるよう誘導する外交を推進してきている。

 西側を含む多くの国は、台湾ではなく中国を国家承認している。しかし最近までの多くの諸国の立場は、中国による台湾領有の主張をacknowledgeしつつ、その紛争の平和的解決を主張するか、あるいは何ら特別の立場をとらないかのいずれかであった。

 ところが過去18ヵ月の間に、グローバル・サウスの多くの国が新たな外交的立場に署名した。現在、これらの国々は台湾を統合しようとする中国の主張を支持するようになった。

 Economist誌の計算では、今や70カ国が、中国の主張を是認した。この新しい文言は、中国が武力行使する場合に外交的支持を与えることになりかねない。

 バイデン大統領は、時折、「戦略的曖昧さ」という米国の伝統的立場から逸脱することがあった。中国による攻撃を抑止する効果を狙った一手であったが、台湾には独立を宣言するほど勢いづかせないようにするためでもあった。米国の選挙投票日の前、中国は台湾に対する壊滅的な封鎖を模した軍事演習を実施した。


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