2025年2月11日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月4日

  Foreign Policy誌(電子版)が、中国はウクライナ戦争への北朝鮮軍の派遣等につき反対しておらず、中国に介入を懇願することは中国に見返りを要求する余地を与えるだけだとして、西側はむしろ北朝鮮とロシアの間の自然な摩擦点を特定し、悪化させることに努力を費やすべき、とする、CNAS(新アメリカ安全保障センター)シニアフェローのJacob Stokesの論説‘China Is Just Fine With North Korean Troops in Ukraine’を掲載している。要旨は次の通り。

北朝鮮の金正恩総書記(左)とロシアのプーチン大統領の関係に中国は〝介入〟するのか(Contributor / gettyimages)

 多くの評論家が、ウクライナ戦争への北朝鮮軍の派遣は中国を不安にさせていると見ている。露朝連合の計画を妨害するよう北京を説得できるかも知れない、と想像する人もいる。こうした推測は見当違いだ。北京が北朝鮮のロシアに対する軍事支援に反対する可能性は低く、ましてやそれを阻止する行動を起こす可能性は低い。

 中国は言葉でも行動でも、ロシアがウクライナで勝利することを望んでいることを明確にしている。

 北京はまた、モスクワの「正当な安全保障上の利益」を守るという原則を支持している。中国が言う正当な安全保障上の利益とは、大国が近隣諸国の政治および安全保障関係に拒否権を行使し、必要に応じ軍事的に強制する権利である。北京は、台湾とインドに対する軍事的圧力、および日本やフィリピンなど東アジアにおける米国の同盟関係を弱体化させる執拗な取り組みを通じて、この姿勢を示している。

 北京は、金正恩政権の安定を確保したいと考えている。ロシアが北朝鮮に食料、燃料、そして宇宙、衛星、ミサイルに関する軍事技術援助という形で支払う報酬は、平壌政府を支えている。

 さらに、北朝鮮軍がロシアのクルスク州をウクライナから奪還するのを支援することで、ロシア軍は自国の立場を守り拡大することに集中できるようになる。ロシアがウクライナとの戦争から大幅な領土を獲得して抜け出すことは、モスクワが「勝利した」と考えるかどうかの鍵となるだろう。

 中国からすればこのような結末は、たとえ民主主義諸国のパートナー諸国からの介入を受けても、侵略した大国としては勝利するまで耐え忍べば領土を奪取できるというシグナルを台湾に送ることになるだろう。

 中国の当局者は、米国と欧州の当局者が中国に介入を懇願するよう誘う方法として、北朝鮮のウクライナ戦争への介入に失望を表明することがある。昨年10月に米国当局者がワシントンでそのような懇願をしたと報じられており、バイデン大統領は11月に習近平主席と話し合った。このような懇願は北京に外交的影響力を与え、見返りを要求する機会を与える。

 中国に介入を懇願する代わりに、米国とその同盟国は、北朝鮮とロシアの間の自然な摩擦点を特定し、悪化させることに努力を費やす方がよいだろう。北朝鮮は、自国の兵士が多数の死傷者を出し、砲弾の餌食にされたと感じれば、北朝鮮の全般に対する軽蔑と軍事資産の浪費とみなし気分を害するかもしれない。北朝鮮は、規律の乱れたロシア軍とともにいることで兵士の文化的汚染も心配していると思われる。


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