一方、ロシアは、しばしば怪しい北朝鮮の軍事装備に苛立ちを募らせるかもしれない。モスクワはまた、北朝鮮軍の派遣が韓国にウクライナへの軍事支援を促した場合、最終的には北朝鮮軍の派遣が誤りであるとみなす可能性がある。
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シグナルを発している中国
上記論説の、露朝間の軍事協力の進展に対し中国に介入を懇願すべきではないとする政策面の主張自体は、完全に支持する。
しかし、中国にとってウクライナ戦争への対応を巡る露朝間の協力は、決して「気にしない」ということではなく、中国の許容し得る限度内に止まるかどうかを注意深くフォローしていると見るべきであろう。「軍事支援に反対する可能性は低く……」との見方に同意するが、それは現時点においてのことだ。
露朝間の軍事協力が進展する中で、すでに中国は随所で注意喚起と思われるシグナルを北朝鮮に発している。また北朝鮮も、中国が「気にしている」と踏んだうえで、露朝間協力を中国に対する一定の牽制材料として使っている可能性がある。
2024年は中国と北朝鮮の国交樹立75周年であり、習近平と金正恩は新年の挨拶の中で同年を「中朝友好年」とすることを決定していた。ところがその後は4月に中国共産党ナンバー3の趙楽際が中朝友好年の開幕式出席のため北朝鮮を訪問し、金正恩との会談も行った程度で、それ以上に何か大きな交流行事が行われた形跡はない。
また同年7月11日には平壌で、中朝友好協力条約の調印63周年記念レセプションが行われたが、北朝鮮側からは金承燦・金日成総合大学総長(朝中親善議員団委員長)が出席しただけで(朝鮮中央通信)、国家レベルの指導者は誰も出席しなかった。加えて7月には、中国が北朝鮮労働者の一括帰国を要求したと報じられている。
同じく7月には、18年5月に大連市内の保養地に設置された習近平・金正恩両氏の「足形」記念碑が撤去されていることが判明している。
さらに金正恩は10月1日付で中国の75周年国慶節に祝電を発していたが、習近平は15日遅れの10月16日になってようやく答電を返している(朝鮮中央通信)。