中国天津市の港・濱海新区で起きた爆発事故、いわゆる〝8・12〟の爆発の原因はいまだにはっきりしない。陰謀説と親和性を持ってしまうのは、こうした当局の対応にも関係しているのだろう。
それにしても死者159人を超える(9月3日時点)悲惨な事故を政治的陰謀として仕掛けるリスクとはどんなものなのだろうか。しかも習近平政権にはほとんどダメージのない陰謀を。
数え上げればきりがない工場爆発事故
そもそも企業がしでかす事故や問題は、濱海新区に限らず頻発している。そうした事故と違い天津港の事故だけが政治的背景を持つ意味はどこにあるのか。それともどの事故も同じように裏に政治が動いているのだろうか。
かつて上海で食品加工会社が期限切れ肉を使用していた問題では、日本では「共産党の外資潰しだ」という説が流れたのと近似している。
私は当時、このページでマスコミが潜入取材で問題を明らかにするケースは毎週起きていることで、この問題だけを取り上げて傾向を分析することは間違いだと事例を挙げて書いたことがある。
同じように工場の爆発事故も挙げればきりがない。そしてたいていのケースが、上級機関が下級機関を叱り飛ばすショーによって幕が引かれることは、毎日中国のテレビを観ていれば理解できるはずだ。
いわんや党中央が出てくるのであれば大衆が望むのは「正しいお裁き」であり、地方の腐って威張っている官僚に鉄槌を下してくれる姿を見ることだ。天津事故で習政権が傷つくことはありえないし、実際に現状を見てもそれは明らかだろう。
上海の期限切れ肉の問題が「外資潰し」でなかったとしても、日本のメディア界では誰も責任も問われない。無責任極まりない言論空間が横たわっているのだ。後に検証されることもないため、派手なことを言えば言うほどメディアにもてはやされるという悪循環が絶たれることもない。
事実、9月3日の「抗日戦争勝利70周年」の式典には、江沢民も胡錦濤も登場し、丁重に迎えられていたが、江沢民黒幕説が日本で検証されることはないのだろう。
これも日本人がいかに真剣に国際情報に向き合っていないかの証左なのだろう。