中国人富裕層に不動産見学ツアー
習主席の訪問後、シアトルのリアロジックス・サザビーズ・インターナショナル・リアルティ社は、「旅行会社と提携し、中国人富裕層に不動産見学ツアーを提供する」と発表した。ツアーはシアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルスを巡り、高級住宅の売り物件を見せる、という内容で、今年11月からツアーを開始する。
またシアトル郊外の街タコマでは、習主席の訪問に先立ち、市が所有する6.4エーカー(約8000坪)の土地に、中国資本のノースアメリカ・アセット・マネジメント・グループが「職・住・買い物」一体型の巨大なタウンセンターを建設することに合意した。このプロジェクトもEB5投資により実現したものだ。
シアトルで行われたビジネス懇談会では、アマゾン会長、マイクロソフト会長、アップル会長、ボーイング会長などのそうそうたるメンバーのほか、投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏も出席。習主席はその場でボーイング機300機の一気買いを確約するなど、話題を集めた。
その華々しい話題の裏で、今後のチャイナマネーによるシアトルの隆盛を見込んでか、習主席の側近がシアトルの不動産を買い漁っていた、との噂もある。実は側近は習主席の意を受けていた、との穿った見方もあるほどだ。
噂の真否は確認できなかったが、元々習主席は娘をハーバード大学に通わせるほどの、実は親米派でもある。今年3月にはハーバードのファウスト学長が北京を訪問、主席と会談し「今後の環境対策など様々な分野で中国政府とハーバードとの連携を確認した」という。世界一の称号を持つ大学も、チャイナマネーには弱い、ということだろうか。
政治的には習主席が期待したほどの成果は得られなかったかもしれないが、実業、経済面では衰えたとは言えチャイナマネーの底力を十分に見せつける訪米となった。米国の後に訪れた英国でも、同様のチャイナマネー待望論があった、という。
米国の移民は、2030年までに中南米系を抑えてアジア系がトップになる、とのシンクタンクの予測がある。アジア系住民の比率が高まれば黄禍論の復活もあり得るが、リーマンショック後の疲弊から立ち直りきっていない米経済にとって、やはりチャイナマネーは重要なカンフル剤の役割を果たし続けている。
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