今年9月、歴史的な訪米、オバマ大統領との会見を果たした中国の習近平主席。その政治的意味合いとは別に、経済的な置き土産が話題となっている。
まず、全米の主要都市を嘆かせたのが習主席がワシントンに先立ち、最初の訪米都市を米国西北のシアトル市に定めたことだ。人民元の切り下げ、夏の株価暴落などがあっても、やはりチャイナマネーの呼び込みは各自治体にとって魅力的だ。「対米投資に是非とも我が市を」と名乗りを上げていた自治体の長は多い。
シアトルのボーイング車工場を訪問した習近平主席(Getty Images)
その中でシアトルが選ばれた理由のひとつに、中国人による不動産投資が急激に増えている、という現状がある。
米国にはEB5という投資家向けのビザがある。米国内の企業などに50万ドル以上を投資する外国人に優先的に永住権を与える、というものだ。もともとは2012年までの時限立法だったが、EB5マネーによる地域経済の活性化などの効果が認められ、期間が延長されている。
現在ではEB5ビザ取得者の8割が中国人である。隣国カナダにも同様のプログラムがあったが、あまりにも中国系の申請が多かったため、2012年に廃止が決定した(現在は2016年までの期間限定で復活)。特に西海岸のバンクーバーに中国系移民が殺到したため、ビザの廃止は「対中政策」と言われ、カナダ首相が「特定の国からの移民を制限するものではない」と釈明する場面も見られた。
シアトルは位置的にはバンクーバーの南隣りに当たる。すでに巨大な中国人コミュニティが存在するバンクーバーとのつながりもあり、このところ中国系の不動産投資がシアトルに集中しているのだ。