2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月28日

 英国は、オバマ政権と同様のより強いアプローチを考慮すべきである。米国は、中国のサイバー・スパイに強い懸念を表明している。このことは、米中が中国のCO2排出削減のような他の問題における交渉が進展することを妨げていない。貿易に関しては、米国の政策は、案件ごとに中国の投資を誘致するのではなく、包括的な二国間投資協定(BIT)を交渉するというものである。英国とEUは同様の方法で交渉と規則に基づき、中国の外国投資への開放を求めるべきである。

 オズボーンの中国経済に対する長期的な賭けは正しいが、国家安全保障と貿易に関し、両国関係をよりバランスの取れたものにする保証を求めるべきである、と指摘しています。

出典:‘UK’s unbalanced relationship with China’(Financial Times, September 22, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/b18ae09c-611c-11e5-9846-de406ccb37f2.html#axzz3mkS5Bdc0


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  この社説は的を射ています。オズボーン財務相主導でシティに中国のお金を取り込むことなどを念頭に行われている対中経済関係強化策は、前のめりになり過ぎて、いろいろな問題があります。米国の制止を振り切ってアジア・インフラ投資銀行への参加を決めたことは記憶に新しいですが、今度は、英国内での原発建設に中国を関与させよう、それに投資をさせようとしています。

 中国は原発を今後大量に建設しようとしています。日本国内ではその安全性に懸念を示す向きもあります。British TelecomとHuaweiの提携の話は、情報漏洩につながる可能性への懸念でしたが、原発の問題はこの問題以上に、安全性の見地からも精査が必要です。今後、地元が心配の声を上げることになるのではないでしょうか。

 欧州諸国は、中国との関係については、経済的利益獲得を中心にした政策を展開しています。中国の軍事的台頭に伴うアジア地域での安全保障問題には日米のような関心を持っていません。それゆえ、対中政策について日米と欧州の間のずれが大きくなっています。冷戦末期に「対ソ連で日米欧の安全保障は不可分」とされたウィリアムズバーグ・サミットは遠い昔のことになってしまった感があります。しかしグローバリゼーションが進む中、そういうことでいいのか、地理的遠隔性から出てくる安全保障問題への無関心は適正な政策なのか、今一度考えてみる必要があります。

 いずれにせよ、大帝国を築いた英国がグローバルな関心を低下させ、自己の経済的利益確保に努めている姿は、時代の変遷を痛感させるところがあります。

  
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