2024年11月22日(金)

安保激変

2015年10月30日

 日本はすでにオーストラリアやフィリピンと共に、「米国の行動を支持する」という立場を政府として表明している。明確な発言を避けている韓国と比較すれば、米国の目には頼もしく映る。しかも、米国では、先般の海上自衛隊の観艦式で安倍総理が、戦後、日本の総理としては初めて、米空母に降り立ったことや、観閲式の様子などが報じられたばかり。

 米政府の幹部クラスでは、4月の総理の議会での演説、直前の日米防衛協力の指針の改定、安全保障法制の制定などを通じて日本がこれまで一貫して打ち出してきている「積極的平和主義」「国際秩序の維持のために努力する国」によって、日本も南シナ海での「航行の自由作戦」のような活動に、躊躇なく参加できるようになったというイメージを持っている人が圧倒的に多いだろう。米海軍が海上自衛隊と南シナ海で共同演習を行うことが最近、報じられたばかりだが、このような対応を取ればとるほど、米側の期待値は上がっていく。

 しかし、現時点では、実際に共同パトロールを米国から求められた場合にすぐに対応できるかは、南シナ海情勢が今般成立した安保法制で定められた「重要影響事態」や「存立危機事態」に該当するという認定を国会がするかどうかにかかっている部分が出てくるため、どういう形でなら自衛隊が参加できるのかは不透明だ。しかし、日本のこの事情を実際に理解している人は米政府の中でも少ない。

 「支援の表明は口だけだったのか」と言われるようなことがないよう、日本は、これまで以上に、東南アジア諸国の海上保安庁や海軍の能力構築など、自衛隊や海上保安庁による訓練の提供など、今すでにできることにより一層、力を入れるべきだろう。少なくとも、南シナ海情勢における対応が、日本のアジア太平洋地域の安全保障でどのような役割を果たす覚悟があるのかを問うリトマス試験になってしまうような事態だけは避けなければならない。


  
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