オトナの教養 週末の一冊

2015年11月29日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

23区の通信簿

 本書のハイライトは、第4章の「23区の通信簿」である。この部分を詳しく紹介するわけにはいかないので、具体的なランキングや評価については、実際に本書を手にとって確認いただきたいが、それぞれの区は、かなりの部分で大きな違いがあることが詳しくわかる。一例だけ紹介すると、筆者の出身地の大田区は上からA〜DクラスのうちのCクラスに位置している。

 戦後に生まれた大田区は、統合した旧大森区と旧蒲田区の一字ずつ取って名前をつけた経緯がある。旧大森区は田園調布に象徴される「山の手エリア」であり、旧蒲田区は京浜工業地帯一角として工場が集積する地域である。

 この大田区の“出自”について、筆者はこう表現する。

 〈しょせん水と油。足して二で割った名前を選ばざるをえなかった背景には、簡単に埋めることのできない異文化の存在が影を差していた〉

 それぞれのエリアが発展を遂げながら大田区は成長してきたともいえるが、筆者は今後についてはこう見通す。

 〈世田谷のように山の手型の商店街が賑わっているわけでもないし、杉並区のように文化の伝統があるわけでもない。あるいは目黒区のように、女性を惹きつける強いブランド性もない。となれば、大田区にとって、次の一手は大森エリアの未来をいかに力強く描けるかにかかっているといっていいだろう〉

 大田区の一例を紹介したが、23区それぞれに固有の歴史や流れがあり、様々な課題も抱えている。一方で、こうした多様性が東京を魅力的な場所にさせ、活気づかせる原動力になっているとも言えるだろう。本書をかばんに入れて、休日などに知らない区を訪ね歩くのも悪くないな、と思った。

  
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