2024年7月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年12月23日

情報機関は万能ではない

 今回のパリでのテロのような事件があると、必ず情報活動の失敗が言われ、その強化論が出てきます。ただ、テロリストは秘密裏に準備し、テロを行うのであり、情報機関がそれを把握するのはそう簡単ではありません。把握できないことのほうが多く、把握できたら、よくやったということです。情報機関への期待が大きすぎるので、その活動の失敗を言いたて、情報機関側ではそれを利用して予算、権限拡大を求める傾向があります。 情報機関も万能ではないことを認識しつつ、その強化を、民主主義の理念を尊重しつつ、図ることが重要なのでしょう。

 国家安全保障局は、スノーデンが暴露したような国内通信の傍受を再復活させるべきであるとのウォールストリートジャーナルの主張は、通信の秘密は重要な人権であり、あまり適切ではありません。それに大量にデータを集めても、十分に利用、分析できていません。もっと絞り込んだ通信傍受を考えるべきでしょう。

 今は米国内での電話の盗聴は原則禁止ですが、メールは傍受してよいし、外国との通話は傍受しても良いとされています。グーグルなどの暗号化はメールの傍受を難しくします。これをどうするか、費用対効果、通信の秘密の尊重など、検討が必要でしょう。

 脅威との見合いで、人権の尊重の理念を踏まえつつ、どのような情報収集努力をすべきかが問題です。テロ対策の必要性と、人権や生活の便宜のバランスを良くとっていくべきです。日本でも、地下鉄や新幹線のテロへの脆弱性が気になったことがありますが、乗客全員の荷物検査をするわけにもいきません。生活の便利さとのバランスをとる必要があります。

 テロとは断固戦う必要はありますが、テロに反応して大騒ぎすることはテロ組織の思う壺です。冷静な対応をすること、テロに振り回されないことが重要です。

 なお、イスラム過激派が当面の問題ですが、神の名において殺人を推奨するような主張は正当な宗教上の主張ではありません。彼らに宗教の自由に基づく保護を与える必要は全くありません。神の名において殺人を教唆する過激な説教師は、たとえモスクでなされようとも、その言論を封殺、弾圧すべきでしょう。
  
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