2024年6月16日(日)

ペコペコ・サラリーマン哲学

2009年10月21日

            序  文
                                                                    隅谷 三喜男

  下壮而君は異色の官僚であった。もちろん人一人ひとり個性がある。しかし、下君ほど異色のある役人は今後現れないと断言して憚らない。彼は農林水産省の中堅官僚としても注目され、その将来は嘱望されていたが、単なる優秀な役人ではなかった。農林業に限らず、広く現代資本主義社会について透徹した視野をもっていたことは、本書を一瞥すれば明らかであろう。その彼が四十六歳の若さで不幸にして脳内出血のために倒れたのである。痛恨の極みである。
(中略)
  下君は前述したように役人としての重責を次々に負い、現実の農政と日本経済にふれ、その当面する問題解決の衝に当ったが、彼の研究への意欲が衰えることを知らなかったことは、本書を一見すれば明らかである。ここに収録された四篇は、一九七三年から八一年にわたって書かれ、彼のルーズリーフに書き留められたものである。その意味では本書は下君の未完の論文集であるが、その中心を流れているものは、彼が大学時代から追求してきた現代資本主義論である。
(中略)
  下君がいかにスケールの大きな、理論的に鋭い役人であり、研究者であったかが理解されるであろう。本書はその下君が未完で残した遺稿集であるが、我々に多くのことを語りかけ、教えている。多くの人々に読まれることを願って止まない。
      一九八五年六月
               下君の逝去満二年に当って

※この序文については、本記事末尾に詳しく引用しています。(編集部)

 30~40代という、社会人にとって一番忙しい時期に、自ら研究を進め、ルーズリーフに論文を書いていたという下君の姿勢に驚かされました。46歳の若さで亡くなった下君の人格・識見・学力を慕う人たちの尽力によって、霞が関でその名がとどろいていた“下論文”が、『現代資本主義の透視』という本になって1985年に刊行されたのです。

下君が私ごときにも与えた影響

『法人税実務マニュアル』
(金児昭著、日本実業出版社)

 26年前、下君が亡くなってしまったことに衝撃を受け、お葬式に行った私は、下君から大変な刺激を受けました。私は、47歳の時、初めての単著本『法人税実務マニュアル』(日本実業出版社)を書きました。下君のような壮大なスケールではありませんでした。が、会社「経理・財務」を一筋にやってきた小さい世界の専門家として、法人税の実務について書く機会を頂いたことに大きな喜びを覚えました。

 それから、16年後の1999年、自らの意志で信越化学工業の常務を辞任し、経済・金融・経営評論家と著述業の道に入りました。私のちっぽけな人生も、知らずに知らずに下君の無言の影響を大きく受けていました。

 今回の亀井君の活躍をきっかけに、下君のことをいろいろと思い出すうちに、下君の遺稿集の序文を書いた隅谷三喜男先生にも関心を持ちました。東京大学経済学部の教授を長年勤められ、2003年2月22日に、86歳で亡くなられました。各紙の追悼記事を見ると、これまたすごい方だったことがわかります。


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