日米双方において指導者が直面する喫緊の課題は、成長の回復、教育や医療の改革と事欠かない。しかし指導者の力を試す灼熱の炉があるならば、それは内政においてではない。戦争か、はたまた平和か。歴史を通じそこにこそある。そして今日、その炉とはアフガン紛争の現場だ。
軍民の国際派遣部隊を襲う困難また困難は、多くの難問を引き出した。民主主義の持続力。暴力過激主義の台頭。そしてタリバン復活が、隣国の(核を持つ)パキスタンに及ぼす影響とはいかなるものか……。
日本は衰える一方? 独自の力見せる時
(写真提供:AP)
これらが難題ならばこそ逆に、鳩山政権にとって日本外交の真面目を示す好機となる。国際システムは激変中だ。今や平和、安保の公共財を自ら進んで生み出す者となるべく、日本は何をすべきなのか。新政権は進歩の道筋を示すことができよう。
「AfPak(アフガニスタン・パキスタンを不可分と見る際の呼称)」に関し、日本独自の大胆な方針を打ち出すのである。そうすることで、民主党新政権は複数の公約へ同時に近づいていける。
日米同盟をより平等なものとしつつ、強めることができる。安全保障とガバナンスの向上、経済機会の増大を望む多くのアジア諸国に対し、日本ならではの理念的・物質的指導力を印象づけることができる。
日本とは衰亡の一途にある国と誤認する向きが多い当節、そうでないところを日本の友人、競争相手の双方に示せるし、非軍事大国として遺憾なく力を出す国になれること、「BRICs(伯、露、印、中ら新興勢力)」の台頭に幻惑され、よもや忘れてもらっては困る国だということを、示して見せられよう。
アフガン・パキスタンのるつぼに身を投じることこそは、鳩山新政権の好機となり得る。日本の外交安保政策を、ドグマの硬直から抜け出させ、日本社会の変化や米国における対日期待、国際安保環境の変容を反映させた方向へと、動かしていくことができるかもしれないからだ。
民主党政権は、経験不足や官の惰性、また日本という国は確固たる影響力をふるえぬ国だとする古臭い思い込みを克服できるか。それらを振り払い日本の決定的影響力を示すことが、まさに世界が最も喫緊とする課題においてできるだろうか。
議論のいとまはない。アフガニスタン情勢は緊迫している。