加えて、(5)新たな電力インフラ開発計画を日本主導で進めることもできる。中央アジアとインドにパキスタン、アフガニスタンを結んで上下流をつなぎ、送電網をつくり、共同で水力発電施設も建設するのである。
この地域発のテロ集団が西側各国とその同盟国に向け頻々と大規模破壊攻撃をしかけたり、核兵器が拡散し、あるいはパキスタン発のテロ攻撃が引き起こす紛争で核が現実に使われたりする世界において、日本の民主主義と繁栄は安全たり得ない。
アフガニスタンの暴力的狂信主義者との戦いに、米国始め日本の盟邦国家が仮にも敗れ、それでも日本の利益と価値が保全されるなどということも、またあり得ない。
なぜならその結末は欧米諸国の孤立主義へ向けた退行となり、パキスタンの未来に疑問符がつくのみでない。リベラルな価値それ自体の正統性と耐久力が疑われるだろうからだ。挙句に、そんな価値を共有しない新興勢力(中国を含む)が、国際秩序を自分たちの利益になるよう─日本とその民主主義盟邦諸国の不都合を承知のうえ、作りやすくしてやることになるのである。
日本の人々は、内実はともあれ変革への票を投じた。新政権は国民に向け、危険のいやます世界において日本の国益とは何か、曇りなく説明すべきだ。そしてアフガニスタンとパキスタンの平和と開発に向け新たな戦略指針を打ち出すことができるなら、日本は新しい国の姿を獲得する。リベラルで豊かな国際システムを支えるに必要な公共財を供給する国として、アジアで抜きん出た国。それが日本。ひっきょう、日本国民の安全と繁栄も、まさにこのシステムに依存するのである。
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