2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2009年11月2日

日本の国益決定的
 給油中止なら一層

 アフガニスタン、パキスタンの命運は日本にどんな意味をもつか。  アメリカ人も、同じ疑問をもっていた─パキスタンで計画されアフガニスタンのアル・カイダ聖域が可能とした、あの9・11テロ攻撃がその問いに答えをくれるまでは。

 回答の2つ目は、パキスタンの科学者A・Qカーンによる核兵器関連物資の密輸だった。パキスタン、北朝鮮、そして中東の何カ国かで核化の種をまいた国際工作である。

 3つ目は、欧州と東南アジアを狙った数次のテロだ。パキスタンの過激派と、テロリスト施設が関与していた。そして4つ目が、2008年11月インドのムンバイを襲った激しいテロだった。実行勢力はパキスタンのラシュカレイ・タイイバ(「義軍」)。インドとパキスタン両核保有国が一触即発となり、インドが自制しようやく事なきを得た。

 日本経済は中東の資源に依存している。日本社会は個人の自由の上に成り立っている。米国との同盟をかけがえのないものとする国が日本である。アフガニスタンとパキスタンに日本がもつ国益は、決定的だ。

 日本の名誉のため言うならば、01年以来日本はアフガニスタンの治安、復興開発、人道援助に18億ドルを投じたし、今はアフガン警察官全員の給与を負担している。小泉政権下では、アフガン戦域で作戦行動するNATO艦船補給のため軍事力を出す歴史的挙に出た。05年、パキスタンを地震が襲った際には自衛隊を含む相当規模の緊急援助隊を送ったし、最近ではパキスタン支援国会合を東京で開き、10億ドル相当の民生支援を約束している。

 立派な働きである。しかしアフガニスタンにおける危機の深化とそのもたらすパキスタンへの危険、挙句に「AfPak」が失敗に終わった際、世界の主要民主主義国を見舞うであろう結末を思うなら、日本の貢献は霞んでしまうのだ。

日本ができる5策 
問われる自由の価値

 日本の現政権には国民の広い支持がある。活力を回復した日本を、世界に示す機会が開けている。この機をとらえ、鳩山政権は今こそアフガニスタン・パキスタンに対し大胆な新戦略を打ち出すことができよう。このことは、民主党が公約通りインド洋でのNATO艦船向け補給をやめる場合、とりわけ重要になる。

 踏み込んだ戦略を示すことで、日本は新たに獲得した自信と世界観を主張するとともに、対米同盟を強化し、日本の力を疑うすべての者たちに「日本復活」を示すという、3つの目的を達成できる。そして、今より人間的で栄え、平和を愛好する世界、すなわち日本人の価値観に沿う世界において、主要な働き手として踏みとどまることができるだろう。 日本の戦略が含んでよい方策として、(1)陸自を出しNATOの国際治安支援部隊に加わらせる(小沢一郎氏も民主党党首だった時これを提案した)(2)アフガン軍と警察の長期的能力向上へ向けた信託基金に対する大規模支援(3)アフガニスタンの行政・教育・司法・医療を支えアフガン国家の民生基盤を充実するための専門家派遣(4)パキスタン部族地域で軍事以外の経済活動を育てるため草の根レベルで開発を助ける信託基金(世界銀行管轄)に対し、相当規模の新たな支援─があり得る。


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