2024年12月23日(月)

世界の記述

2016年3月10日

 フィリピンで2月9日、次期大統領選の選挙運動が解禁された。有力候補者5人は各地で決起集会を行い、5月9日の投開票日まで3カ月間、論戦は続く。
2010年に行われた前回大統領選ではアキノ大統領が2位以下に大きく水をあけて圧勝した。しかし、今回の大統領選では「一馬身」抜きん出た候補者が不在のため、有権者の間でも消去法で候補者選びを考えるなど、早くも戸惑いの声が上がっていた。

 選挙運動解禁後に初めて開かれた公開討論会では、出席した有力候補者5人が貧困や汚職、ミンダナオ和平問題などを中心に舌戦を繰り広げた。

マニラ市街(iStock)

ダバオ市政を長年牛耳ってきた異色の存在

 フィリピンは6%前後の経済成長を維持しているが、貧富の格差は依然として広がったままだ。汚職問題については、アキノ政権がこれまで最優先課題として取り組み、一定の改善はみられたものの、撲滅にはほど遠い。

 3月上旬に公表された有力候補者5人の支持率調査結果によると、1位がグレース・ポー上院議員で支持率26%。続いてジェジョマール・ビナイ副大統領が25%、ロドリゴ・ドゥテルテ、ダバオ市長とマニュエル・ロハス前内務自治長官が並んで21%を獲得し、最下位がミリアム・サンチャゴ上院議員の3%だった。

 中でも異色の存在としてこれまで注目を集めてきたのがドゥテルテ市長だ。ダバオ市政を長年牛耳り、治安対策を徹底した行政手腕が評価される一方、犯罪者を殺害する処刑団への関与も認めており、米大統領選候補者のトランプ氏を彷彿とさせる過激発言が問題視されている。

 公開討論会では「大統領に選出された暁には、違法薬物や犯罪者の取り締まりに向けて法を執行する。犯罪者の殺害も命じる」と強調した。超法規的殺人を正当化するこれら同市長の発言に対しては、国際人権団体などからすでに批判が相次いでいた。


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