支持率1位のポー上院議員は国民的俳優の娘で、前回上院選ではトップ当選を果たした。ところが大統領選立候補を前に立候補資格の有無の議論が浮上した。審理を続けてきた最高裁は3月上旬、資格を認める判決を下したため、支持率をさらに伸ばす可能性が出てきた。
ポー上院議員と僅差で2位につけたビナイ副大統領は、マニラ首都圏の商業都市、マカティ市政時代に起こした汚職疑惑が現在も尾を引いており、今後の選挙運動に影響を及ぼす恐れがある。
アキノ大統領から後継候補に指名されたロハス前内務自治長官は出馬以来、支持率が低迷中。選挙運動期間中に逆転劇を果たさなければ当選は覚束ない情勢だ。
いずれの候補者も国内向けの政策は提言しているが、外交政策に関する明確な意思はこれまでのところ見えない。
アキノ政権下で急浮上した南シナ海南沙諸島の領有権をめぐる争いでは、実効支配を拡大し続ける中国への対策が次期政権下でも求められる。
親中国に傾く可能性もある
この問題に絡んでアキノ大統領は昨年6月、日本で行われた日比首脳会談で、中国の実効支配拡大は「一方的」として深刻な懸念を表明。その上で、日比防衛装備品・技術移転協定の締結に向けた交渉を開始することで一致した。同協定は今年2月末に署名され、南シナ海問題を踏まえた安全保障・防衛分野の協力関係が強化される。
候補者5人中、対中政策で現政権と同じく強行路線を取るのはロハス前内務自治長官だろう。その他の候補者が選出された場合、親中路線に舵取りを切る可能性も指摘されている。今後の状況次第で各候補者の支持率は変動するとみられるが、かなりの混戦が予想される。
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