Wedge REPORT

2016年3月25日

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デフレの何が問題なのか

 そもそもお金の価値は、そのお金で何が買えるか、で決まる。そのため、物価が上がることはお金の価値が下がることを意味し、物価が下がることはお金の価値が上がることを意味する。日本で長期にわたる継続的なデフレが発生したということは、日本で流通する日本円の価値、現預金の価値が長期にわたって継続的に上がり続けてきたということだ。物価が下がり続けて、現預金の価値が上がり続けるとしたら、あなただったらどういう行動をとるだろう。例えば車を買おうとするとき、毎年、車の値段が1%ずつ下がっていくなら、もう1年か2年待ってから買おうと考えないだろうか。中にはそういう人も出てくるだろう。買い控えの発生だ。

 あるいは、物価が下がり、現預金の価値が上がっていく中でリスクをとって投資をしたいと考えるだろうか。例えば100万円もっている人がリスクをとって投資をしても結果が100万円以上になるか、100万円以下になるかは分からないが、無理してリスクをとらず100万円を100万円のままとっておくことができるなら、物価が1%下がればそれまで100万円だったものを99万円で買えるようになるのだから、同じものを買っても1万円のお釣りが来る、つまり実質的にお金が増えることになるのだ。こうして、デフレの環境下では、お金を貯め込んだ人は消費や投資にお金を回さずにタンス預金や銀行預金にしておこうとする。

 お金を借りて家や車を買おうとする場合はどうだろうか。3000万円の住宅ローンを組んで家を買おうとする時、もし物価が毎年1%ずつ下がっていくならば10年後には物価は10%も下がり、月10万円の食費・光熱費は10年後には9万円になる。すると、3000万円の借金は月10万円の食費・光熱費の300カ月分から、月9万円の食費・光熱費の333か月分に実質的な価値が増えてしまう。

 ここまでのことを現役世代とリタイア世代の立場で考えてみよう。現役世代にとっては、デフレは消費を先送りすることを促して本来旺盛な消費意欲を削ぎ、資産形成のための投資意欲を減退させる。また、借金を抱えることが多い現役世代の負担を重くし、お金を借りて住宅や車などを買うハードルを高くする。

 一方で借金が少なく、金融資産を貯めたリタイア世代にとっては、もともと現役世代に比べて旺盛ではない消費を先送りすることを促される一方、現預金にしておけばお金の実質的な価値が増えていくので、金融資産を消費や投資に回さず現預金にしておこうとする気持ちが強くなる。借金は少ないのでデフレによって借金の価値が増えてしまう負担感はあまり感じない。

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