デフレ期の日本で起きたこと
日本では1990年代後半以降、15年に渡ってデフレが続いてきた。この間に何が起きたのか。OECDの対日審査報告書2015年版に記された文言を一部ご紹介したい。
「20年にわたる低成長と継続するデフレは、日本の生活水準をOECDの平均以下に低下させた」
「過去20年間経済成長は低迷し、1990年代初頭にOECD諸国の上位半数の平均にあった日本の一人当たり収入は、今では14%下回る水準になっている」
「1980年代半ば以降、最も低い所得層が実質収入の絶対額で減少した国は、OECD諸国の中で日本しかない。さらに、すべての勤労者世帯とすべての子供のいる世帯の貧困率が、税及び社会保障制度を考慮した後高まる国はOECD諸国で日本しかない」
デフレの何が問題か、あるいはそもそもデフレは問題なのか、ということはひとまずおいておいて、長期的・持続的なデフレが発生した日本で暮らしてきた人々にとってOECDの報告書に記されたこれらの文言は、実感として当てはまっているだろうか、それとも当てはまっていないだろうか。私がこの期間に日本で暮らしてきた中で見聞きし、感じてきたことは、これらの文言と比して違和感なく、「まぁ、そうだっただろうな」と思えるものだった。
お金の価値と物価
では、デフレの何が問題なのか。国の物価全体が下落するデフレは、直感的に「ものの値段が下がって、同じものを安く買えるようになるのだから、良いことではないか」と思えるかもしれない。あるいは、「国全体はどうであれ、少なくとも私にとっては、物価が下がって安くものが買えるようになることはありがたいことだ」と思うかもしれない。ところが、先程のOECD報告書の文言がこの間の日本に起きたことを正しく表現しているのならば、デフレは日本の社会全体としては良いことでもありがたいことでもなく、あなた自身も含めた日本の社会全体を長期にわたって蝕んできた可能性がある。
10年前、20年前と比べて私達日本人の暮らしは豊かになっただろうか。最近海外に行かれた方は10年前、20年前に海外に行った時と比べて、日本の豊かさは高まったと感じるだろうか。10年前、20年前と比べて、あなたの収入あるいは使えるお金は、あなたがその間に努力した分だけ、苦労した分だけ、増えただろうか。そうした分だけ暮らし向きが良くなったと感じられるだろうか。