総務省の消費者物価指数(総務省CPI)の問題
害悪であるデフレから脱却し、年率2%の物価上昇を目指すためにまず第一に必要なものは何だろうか。それは物価上昇率の正確な把握である。これが非常に難しいのだ。インフレ率というのは「世の中全体の物価の上昇率」であり、人々が支出する様々なものの値段の上下動を把握したうえで、それぞれをどのくらいずつの比率で組み合わせたものが「世の中全体の物価」とするのかという点に大きな難題がある。
パンの価格の変動と、電車賃の変動と、電気代の変動は、同じように扱っていいのか、比率を変えるとしたらどのくらいずつにするのが適切なのか、という問題である。総務省CPIではこうした品目別の割合を5年に一度見直している。裏を返せば、一度決められた配分は、家計の出費構成が変わっても見直されない。値段が上がってしまったことであまり買われなくなったものも、決められた比率で指数に組み込まれ続ける。
総務省CPI算出のための価格調査も人力で行われており、調査人員は限られているため、調査範囲は限定される。特売などの効果も考慮されない。結果発表のタイミングも遅く、1カ月遅れで発表され、1月の消費者物価指数は翌月2月末になってから発表される。実際の価格調査から公表までのタイムラグは1カ月半もある。
新たな物価指数の開発
こうした総務省CPIの問題を解決すべく、新たな物価指数算出の試みもなされている。例えば日経CPINowは、スーパーの日々のPOSデータを使って算出されていた日経・東大日次物価指数を進化させる形で開発されて公表されている。800店舗以上のスーパーの日用品や食料品30万点以上のPOSデータを活用し、実際に消費者が購入した価格と数量を使って計算されている。購入日の翌々日には指数値が発表され、速報性は総務省CPIとは比較にならないほど高い。