2024年12月4日(水)

WEDGE REPORT

2016年4月26日

バスルーム法案にトランプ氏は反対

 こうした動きが「トランプ効果」だという理由は、「異なる他者を排斥する」ことを公に訴え、それが国民の支持を得ている、という現状がある。移民への差別は当たり前、性的嗜好が「ノーマルではない」人を排斥しても構わない、という風潮が全米に広がった感があるのだ。

 しかし、皮肉なことに、大統領選挙でも話題に上がるこのバスルーム法案に対し、トランプ氏は反対、テッド・クルーズ氏は「理解を示す」姿勢だ。トランプ氏の反対理由は差別うんぬんではなく「ビジネスにとってマイナスである」ため。クルーズ氏は「特に若い女性の安全を守るために、女性用トイレに男性を入れない、という法案には一定の意味がある」と援護する。

 トランプ氏の歯に衣着せぬ発言は、米国人の中に眠っていた不満や差別心を表面化させたことに変わりはない。現在米国では合法移民の市民権申請数が急激に増えている、という。移民、外国人を非難するトランプ氏の言動から、「もしトランプ氏が大統領になれば現在の合法的ステータスも廃止され国外退去になるのでは」という不安が人々の間に広がっているためだ。

 欧州各国からも法案に対する非難の声が上がっており、英国訪問中のオバマ大統領は記者会見での質問に対し「法案はゲイやトランスジェンダーの人々の権利を損なっており、間違ったもので撤回する必要がある」と弁明する立場となった。しかしドイツ銀行など、欧州企業もこれらの州から撤退する動きがあることに対しては「どの州も美しく、人々はフレンドリーだ。訪問すれば礼節を持って迎えられる」と擁護する1幕も。

 8年前にオバマ大統領が就任した時の目標は「ユニティ(統一)」だった。しかし黒人と白人の溝、富める者と貧しき者の格差の広がり、そして異物の排除、と実態は国の分裂は深まるばかり。次の大統領はこの国内問題にどう対処していくのだろうか。

  
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