大衆モデルのEVとして注目を浴びていたテスラ「モデル3」が3月31日、ついに製品発表された。発売は2017年の予定だが、発表会と同時に予約注文受付も始まった。テスラは「宣伝しない自動車メーカー」として知られるが、今回は発表会の模様をウェブで中継したほか、一度でもテスラ社のウェブサイトにアクセスしたユーザーに対し中継の案内と「テスラモデル3の予約の仕方」と名付けたメールを一斉発送するなど、かなり力を入れた広報活動も行われた。
予約数は32万5000台
その結果、予約受付開始の3月31日初日の予約数は10万台を超え、4月7日現在での予約数は32万5000台を超えた(テスラ広報による公表数)。ただし予約方法は1000ドルのデポジットのみで、デポジットは返金可能。そのためこの数字がそのまま2017年の販売台数につながることはなさそうだが、それでも近年の米自動車業界の中では画期的な出来事だった。
というのも、米国乗用車のベストセラーはトヨタ「カムリ」、ホンダ「アコード」、日産「アルティマ」などがしのぎを削っているが、トップのカムリの2015年の販売台数は43万台弱。ベストセラーカーはほぼ年間販売台数が35-40万台のレンジだ。つまり予約注文数のみで考えると、テスラモデル3は2017年のベストセラーカーと並ぶ勢いとなる。
これにより一時テスラの株価は250ドルに迫る勢いに上昇した。しかし、この爆発的な人気はテスラにとって飛躍の可能性を秘めると同時に大きなリスクともなっている。
最大の問題となるテスラの生産能力
最大の問題となるのはテスラの生産能力だ。テスラは昨年第四四半期のモデルSの売上が1万7400台と、前年比75%増となった。2015年の販売台数総数は、新規に投入されたモデルXを含めて5万台あまり。2014年が3万台程度だったため、好調な成長ぶりと言える。しかし、2015年の予約総数は7万台を超えていた。特にモデルXについてデリバリーが非常に遅れており、5000ドルのデポジットを支払った顧客からは多くの苦情が寄せられている。