2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月20日

 理想は、政党から独立した内閣の迅速な選定である。しかし、いまは政治的に不可能である。米国とイランはアバディの内閣変更についての、彼の幾つかの希望が実現できるように助け、政治危機を回避させるべきである。たとえば交代させる14の大臣ポストの内、半分をアバディが、主要政党が半分を指名するとすればよい。

 米国にもイランにも、バグダッドでの政治危機の解決は利益である。並行して政党と首相の迅速な妥協のために動き、アバディの賭けが危機にならないようにしていくべきである。

出 典:Zalmay Khalilzad ‘Haider al-Abadi’s Dangerous Gamble’ (New York Times,
April 12, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/04/13/opinion/haider-al-abadis-dangerous-gamble.html?partner=rssnyt&emc=rss

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求められるアバディ首相の適切な政治判断

 ハリルザード大使はアフガン生まれですが、最近、米国の駐アフガン大使、駐イラク大使、国連大使を歴任した有能な外交官です。この人の意見は常に傾聴に値します。この論説も的を射たいい論説です。

 アバディ・イラク首相がやろうとしたテクノクラート中心の内閣によって、イラクを立て直していこうという構想は、それ自体としては賞賛に値する試みですが、政治的現実を無視したやり方であったため、反発を受けてしまったということです。ここでアバディが自説に固執すると、内閣ができず、政治的危機が現実化してしまいます。アバディ首相としては、現実を認め、早めに政党と妥協する方向に動く方がよいと思われます。政治には、現実と理想、やりたいこととできることを折り合わせていく必要があります。どこで妥協していくのかは、決定が難しい問題ですが、アバディ首相の適切な政治判断が今必要と思われます。

 イラクに関しては、米国が撤退を先走りすぎ、イランが影響力を増やしてきました。しかし、イラク内には、米国をイランに対するバランサーとして期待する声も大きいようです。いずれにしても、イラクに影響を与えていくのは米国とイランであり、その両者がイラクについて対立と協調を織りなしていくのだと思われますが、これまで米・イランの対立面にばかり焦点が当てられてきた嫌いがありますが、この論説にもあるように、米・イラン間には利益が合致し、協調が利益となるところもあります。この点にも十分な注意を払う必要があります。

 米・イラン関係は地域での影響力が強い両国としての利害の共有のほかに、経済関係強化の可能性もあります。米経済界はイランにビジネス・チャンスを見ています。

  
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