WEDGE REPORT

2016年7月1日

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マスク氏が“賭け”に出た理由

 マスク氏の提案は、テスラ株とソーラーシティ株の交換による買収で、買取価格はテスラ株X0.122から0.131、つまり1株あたり26.5ドルから28.5ドルとなり、ソーラーシティの現在の株価を上回る。

 なぜこのような賭けをマスク氏は行おうとしているのか。1つの理由としてEV、バッテリー、ソーラー・パワーを組み合わせることで「総合的な再生利用可能エネルギー企業」のイメージを高め、単なるEV企業、テスラCEOから「グリーン・エネルギー・コングロマリット」を作り上げる、というものがある。

 テスラは現在ネバダ州に建設中のギガ・バッテリー・ファクトリー建設に際し、EVとバッテリーを組み合わせた家庭用電力エコシステムを提唱した。EVを蓄電地代わりとし、夜間の安い電力をEVに充電の形で溜め込み、昼間にEVからの電力を使用する。このような家庭用電力供給システムも売り出している。そこにソーラー・パネルが加われば、「より安く、エコなエネルギーが入手でき、しかも排出ガスはゼロという究極の省エネシステム」が家庭で構築できる。

 さらにソーラー・パネルを使ったバッテリー・チャージステーションの充実など、テスラにとってソーラーシティを入手することは無意味とは言えない。両社の繰り延べ税金がいずれも8億ドルを超えていることを考慮し、いずれかが黒字転換した場合にもう一方の繰り延べ税金により相殺できる、という税制上の戦略もうかがえる。

“何でもアリ”化するマスク氏

 しかし聞こえは良いが、現時点でテスラもソーラー・シティも赤字会社である。ソーラーシティに至っては昨年の売り上げ4億ドルに対し支出総額6億ドル、と1年で2億ドルもの赤字を垂れ流している。どちらの企業でも最大株主であるマスク氏が両社の統合を図る、というのはウォールストリートにとってはまさに常識はずれの手法なのだ。

 特にテスラは量産型モデル、モデル3販売にあたり、大幅に生産体制を強化する必要に迫られている。その中で「瀕死の太陽光パネル会社を救っている暇がどこにある」という批判が渦巻く。

 米国の経済アナリストの中には「マスク氏は少しタガが外れて来たのではないか」という疑いの声まで上がっている。様々なアイデアで産業界をリードしてきたマスク氏だが、最近の言動には奇妙な点が見られるためだ。

 例えば「自分には交通渋滞をゼロにするアイデアがある」と仄めかし、自動運転の乗り合いバスか、地下を走るハイパーループ網か、と話題になった。かと思えば「テスラの車は宙に浮かぶことができる」という謎の発言。今年のCESで中国企業が「人を乗せられるドローン」を発表して話題となったが、あるいはそのような近未来的乗り物もマスク氏は構想中か、と思われた。一方でスペースXで宇宙事業に乗り出し、火星ロケットを製作する、とぶち上げてみたり、まさに何でもアリの状態に陥っている。

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