新一は本来なら東京大学に合格する実力を持ちながら、新潟の国立大学の理系の学部に進学し、院を卒業して東京のシステム開発会社に入社した。
数々の伏線は新一に絡み合って、ドラマに恐怖の緊張感を与えている。新一に感情移入した観客は、新一のように幾度も叫び声をあげたくなるだろう。
社会的存在としての自分を失う恐怖
「そして、誰もいなくなった」のタイトルはいうまでもなく、アガサ・クリスティーの名作と同名である。クリスティー作品では弧島で起きた連続殺人のあげくに、島から誰もいなくなる。
今回のドラマは、現代の管理社会のなかでも、つながりのあった友人たちを自殺や事故で失うばかりか、社会的存在としての自分自身まで失ってしまう恐怖を味わうことになる。
「HERO」などで知られる、脚本家の秦建日子が書き下ろし、代表作となりそうだ。
ドラマの謎の行き着く先には、新一が開発した「ミス・イレイズ」の存在が浮かび上がってくるのだろう。
「ミス・イレイズ」は本来、個人にとって忘れて欲しいような情報や自分の映像を消し去るシステムだった。さらに、そうした情報を別のモノにも置き換えることが可能である。
新一の大学の友人で総務省の官僚になった、小山内保(玉山鉄二)はこのシステムに関心を寄せている。ドラマは省内の派閥抗争のなかで、小山内とその上司がこのシステムを利用して敵を追い落とそうしていることがほのめかされる。
新一のパーソナルナンバーを乗っ取った男は、奇妙にも新一が大学時代に住んでいた同じアパートの一室に住所を置いていた。いったい誰が仕組んだのか。