テロにより分断されるフランス
死者84人を出したニースでは、事件発生から2週間がたっても国家の追悼式が行われておらず、犠牲者の遺族や市民は、「(ニースのある)コートダジュールが無視されている」と怒りを表す。だが、政府は、度重なる事件の教訓から、場所とタイミングを慎重に検討していることを強調する。
世論調査機関IFOPによると、パリ同時多発テロ事件後、オランド大統領のテロ対策を支持した国民は51%だったが、ニースのテロ事件後には、わずか33%に下落。
テロ対策が難航する中、国会は7月中旬、ジハード(聖戦)を行う可能性のあるフランス帰還者に対し、懲役最高5年と罰金7万5000ユーロ(約870万円)の制裁を検討。国民運動連合(UMP)や国民戦線(FN)といった野党は、警備よりも、警戒する在仏外国人を直接閉め出す、排他主義的な行動を訴えている。
移民対策に名乗りを上げたニコラ・サルコジ前大統領は、民放TF1で、「これは完全に戦争である」と警告。「敵には、タブーも国境も信条もない。だから私は強引な言葉を敢えて使う。彼ら(が生き残る)か、我々か。私なら別の政策がある」とほのめかした。
移民に寛容で、テロ事件とはむしろ関係の浅かったフランスが、この1年半の間に窮地に陥った。今後、確実に増え続けるテロリズムにどう対処していくのか、フランスのみならず、国内治安確保に向けた冷静な判断が求められている。
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