もし農産物の栽培過程にテロリストが紛れ込んでいれば、いとも簡単に野菜に毒物を混入させることができる。このために最低でも従業員の経歴くらいは確認して雇うことが世界の常識になりつつある。ところが、日本では外国人技能実習生が農家に入ってきても農家自体が経歴を確認して雇っているとは言い難いのが現状だ。断っておくが、これは外国人への偏見ではない。あくまでもリスク管理の問題だ。
この「グローバルGAP」とは、消費財流通で世界最大の業界団体「TCGF(ザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム)」の食品安全部会「GFSI(グローバル・フード・セイフティ・イニシアティブ)」が認定する9つの認証の一つである。他の認証には「FSSC22000」や「SQF」などがある。
GFSIには、カルフールやウォルマート、ネスレなどの大企業が加盟。その売上総額は300兆円近くある。最近ではアマゾンが加盟した。特に青果物や野菜は、グローバルGAPがなければ、欧米市場では大手流通が調達しない傾向が強まっている。
ところが、全世界でグローバルGAPを取得している農場は約16万あるものの、日本はわずか400程度。普及が進まない主な要因は、認証の維持管理コストが高く小規模農家が負担を嫌うことや、農家のリスク管理に対する意識が低いことにある。世界の潮流に乗り遅れていることは否めない。
GFSIで理事を務めるイオン品質管理部の岸克樹部長は「世界の市場は、味などの品質は競争分野だが、安全は非競争分野と捉えて連携協力が進む。GFSIが農産物や食品管理についてのデファクトスタンダードを決めている」と説明する。
端的に言えば、GFSIが認めた認証を持っていなければ、いくら「美味しいものを作った」と胸を張っても、世界市場では通用しないということだ。たとえるならこれは、日本の柔道が本家本元と言っても、世界の柔道の試合では、なかなか優位にたてないことと構図が似ている。