日本にも「JGAP」などの日本版GAPが存在する。しかし、GFSIはそれらを認定していない。その主な原因は2つある。1つは、規格やルールなどを決める国際会議の場で発言力が弱いこと。もう1つは、これまでの「JGAP」は審査の運用基準が甘いことだ。たとえば、「グローバルGAP」では運用状況を審査する会社をさらに「審査」する認定組織があって二重にチェックされるが、「JGAP」の仕組みでは認定組織による審査会社へのチェックがなく厳格な第三者認証になっていない。さらに、日本では審査すらないGAPも存在しているという。
食品業界のリスク管理に詳しいコンサルタントは「各自治体や農協単位のGAPが乱立しており、いずれも第三者による審査を受けていなかったり、運用規則がなかったりして、到底世界に通じる水準にない」と指摘する。要は、日本版GAPは「ガラパゴス化」しているのだ。
ミラノ万博で大人気の和食要の鰹節が輸入禁止の危機に
加工食品でも農産物と同じ課題を抱える。その象徴的な出来事が15年に開催された「食料の安全や食文化」をテーマとするミラノ万博で起こった。和食の出汁の材料となる日本製鰹節を、EUが発がん性物質が含まれるとして輸入を認めなかったのだ。そして政府間交渉で特例として万博期間だけ輸入が認められた。この遠因は、鰹節などを生産する日本の水産工場の多くが、食品製造の工程でGFSIが認める安全管理のグローバルスタンダードの認証を保有していないことにある、とされる。そうした認証を取得している日本の水産工場数は中国やベトナムの10分の1以下だという。この結果、欧州では中国産やベトナム産の鰹節が出回って、日本産は「禁輸」という事態になっている。
また、欧米諸国からは「東京五輪での選手村の食事の食材はグローバルGAPなど国際的に認められた認証規格を持つものを使って欲しい」といった要望も出ているという。しかし、現状の日本の農家のグローバルGAP取得状況では供給能力は足りない。