男性経営者は楽をして儲けることしか考えてないのか?
恥をさらすようだが、私も日本政府がレアアースの資源開発で支援をしたドンパオ鉱山開発よりも以前にベトナムには痛い目に合っている。ドンパオ鉱山の隣に位置するライチャウ州のあるラムゼイという地区で既にレアアース開発を計画していた。その頃、日本のレアメタル資源戦略の多様化をテーマとしたプレゼンテーションを北京の国際会議で行ったのがきっかけだった。
中国によるレアメタルの輸出制限が始まる前のことだったが、そこでは「日本はレアメタル資源調達の将来性について困っているわけではない」と、あえて戦略的に強気のプレゼンを行い、より質の高い素材開発などを行っていきたいという話をしたのだ。
そこに声をかけてきた女性の狙いとは?
そのプレゼンを聞いたベトナムのある有力企業が「そういうことなら中村先生、ぜひマーケティングも含めて我われに鉱山開発の指導をしてください」と女性担当者が声を掛けてきた。
私にとっても日本の業界にとっても悪い話ではない。そう考え、2週間後には即座にハノイに飛んで有力企業の会長と面談をした。互いに中国に負けないレベルの高い商流をつくろうと意気投合し、そのためにまずは秘密保持契約(NDA)を結んだのである。
そこから私は日本のユーザーにヒアリングを行いつつ、早々に現地視察を行いたい旨をベトナム側に伝えたのだが、なかなか話が進まない。これは直接話をしないといけないと、またハノイに飛んだのだが、先方は前回までの話を笑顔でくり返し、それよりも日本側の情報を教えて欲しいと言うのである。
すべてを教えてあげた挙句に
私は、パートナーとなる相手には腹を割って隠し事をしない主義である。だから日本のユーザーが求める品質規格や市場ニーズなどの情報を相手に伝えた。
ところが、3度目にハノイに行くと、私が伝えた情報は「すべて既知のものばかりだった」と言うのである。そんなはずがない。私が直接、一次情報としてつかんだ情報ばかりで、そんなものはどこを探しても見つからないものばかりだ。
何をアホ抜かすねんと独り言をいったが(ははぁ、そういうことか)と合点がいった。つまり、彼らは最初から私の秘密情報を引き出すことが目的で、その情報を自分たちの持っている開発利権にうまく利用したかったのだ。
だが、私はそこまでベトナム人は悪くもないだろうという思いも捨ててはいなかった。それに、ここまでにかけた労力も先行コストとして無視はできなかったのである。