相手の手の内を知って利用する
私は、ここからも粘り強く、何とかこの鉱山開発を前に進めようとしたが、4回目にとうとうキレた。会長が、こう言ったからである。「じつは私はチェアマンではない。私に権限などない。裏に大物がいる」と。
(ほーら、来よった)
薄々、感づいてはいたが、ベトナムとのビジネスはやはり一筋縄ではいかない。先を急いだ私の失敗であった。してやられた私が言うのも何だが、日本政府などは、実は表立って話題にしないだけで、ベトナムでの鉱山開発で相当な痛手を負っている。
結局、我われから引き出した情報を使って韓国企業と相当有利な条件で契約をしていたことが後にわかった。
外交交渉とは実を取ること
こう書くと、カカア天下はまるで悪の温床のようだが、そういうことでもない。夫婦喧嘩をしたらよくわかるように、そもそも口喧嘩では男性は女性に勝てない。本来、外交や交渉事は口で勝つものである。戦争で勝ってはいけないのだ。そうなると、普段からカカア天下で口が立つほうが平和なのである。
現実的な問題として、カカア天下のベトナムのように周りを味方につけて相手を黙らせるようなやり方を身に付けることも世界では必要だ。これは、文化の問題ではなく、外交でもビジネスでも「実質を取る」という点で重要なことである。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。