2024年4月16日(火)

風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2010年3月18日

お休みの子がいて班の人数が少なければ、速く走り終わるに決まっているから、人数が他の班と同じになるようにしたとのこと。
そこで、1人1回ずつ走り、お休みがいる場合は、ほかの班と人数を合わせるように、誰かが2回走る、というルールにすることに決まりました。
ルールははじめからあるのではなく、困ったことが起きたら、それを改善するために自分たちでつくっていくもの。そういった意識を子どもたちの中に育てていきたいと思っています。
風2組 学級通信「麦」より

 こうして、子どもたちの間にルールの合意ができる。さらに話し合いを重ねていく中で、いわゆる標準的な「リレー」にたどり着き、運動会へとつながっていく。「リレー」をカリキュラムに取り入れている幼稚園は多いが、このような意図をもって取り組んでいるところはほとんどないだろう。この活動を通じて体力もついていくわけだが、子どもたちにとって一番の収穫は「自分たちのために自分たちでルールつくった」というプロセスを経験したことなのである。

幼児期の1年間は大人の10年間?

チームで勝つための作戦会議も

 「リレー」の活動を通じて、「ルールづくり」とともに、子どもたちは多くを学ぶ。特に「他の班に勝ちたい」という健全な競争心から生まれる「勝つための作戦づくり」や「チームプレー」については、年中児クラス時代とは比べ物にならないほど、思考が高度化していることに驚く。幼児期の1年間というのは、大人の10年分くらいに相当するのではないかと思ってしまう。そして、その子どもの成長の様子は、先生と親との間でかわされる「れんらくちょう」にも記されている。

入浴後、早々とパジャマに着替え、なにやらテーブルの上で紙と鉛筆を使い、真剣に何か考えている様子の颯樹。「リレーの作戦を考えてるの」とトラックのバトンを渡す所、待っている仲間達を図にしています。消しゴムを使いながら書いては消し、ブツブツ言いながら、真剣そのものでした。きっと、先生がホワイトボードに書いていることを真剣に真似しているのでしょうね。
どうすれば一番になれるのか、家に帰ってからも作戦を立てているなんて、よっぽどリレーの活動が楽しいようです。「自分がやりたい!」「自分が! 自分が!」と言っていたのに、こんなに短期間で、仲間の力を認め、自分がチームの中でどの位置にいるのかを理解して、チームが勝つための方法を話し合っているなんて、本当に驚かされてしまいます。花(年少)、鳥(年中)の運動会前は、体が疲れ、家に帰る頃にはイライラしていることが多かったのに比べ、風組の今、走って疲れているのにも関わらず、活動の充実感があるのでしょう。今週はとても穏やかで、イライラしている萌樹(弟)に「どうしたの?」と声をかけていたりします。健全な姿って、こういうことをいうのでしょうね。心からそう思います。
風2組 「れんらくちょう」より

 「リレー」を通じて、また一回り成長した子どもたち。いよいよ2学期も後半にさしかかり、風の谷幼稚園を巣立つ日も近づいているが、新しい世界で誇りをもってしっかりと生きていくための力は着実に育っている。

※次回の更新は、3月25日(木)を予定しております。

風の谷幼稚園
園長・天野優子氏が、理想の幼児教育を実現するためにゼロから建設に乗り出す。様々な困難を乗り越え、1998年に神奈川県川崎市麻生区に開園。「人間が人間らしく、誇りを持って生きていく」ための教育を実践している。

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