2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2016年11月26日

ハンドボールでまちづくり

 そんな中学生のハンドボール大会だが、フウワイ氏は、第一回大会と第二回大会に運営ボランティアとして参加している。10年の月日を経て、フウワイ氏は、学生ボランティアから、試し読みの小冊子が会場で配られる漫画家になった。ハンドボーラーにとっては話題の漫画ということもあり、小冊子は見る間になくなった。全国大会を視察したフウワイ氏は、「久しぶりに春中ハンドの試合を見て、まず圧倒されました。選手たちは体も大きく、力強く、技も多彩で。レベルが随分と上がっているんだと感じました。選手たちには、この大会での貴重な経験を糧に、4年後の東京オリンピックやその先を目指して頑張っていってもらいたいですね」と語った。

春中ハンドで配布された小冊子(左)と、第一巻。体格が大きい選手が有利なハンドボールだが、小さな選手で、かつ経験が少なくても活躍できる様子を描き、多くのハンドボーラーから共感を得ている

 氷見市がハンドボールでまちづくりを行っているきっかけとなったのは、1958(昭和33)年に行われた富山国体で氷見高校が優勝したことにさかのぼる。人口5万人という小さな港町の学校では、野球部やサッカー部がなくても、ハンドボール部はある、というほど。氷見市スポーツ・オリンピック誘致マネジメント室の室長である鎌仲正寿氏はこう語る。「ハンドボール競技の全国大会の開催回数やおもてなしの面では、氷見市は他のハンドボールが盛んな市町村よりも抜きんでていると考えています。今後、全国へ発信できるスポーツイベントとしてしっかりと根付かせ、『ハンドボールファンなら一度は訪れたいまち』として定着させたいと思っています。

 また、そんな中、発刊された『送球ボーイズ』には、昭和33年の優勝のことや、ふれあいスポーツセンターや氷見駅などが登場し、なにより、国体優勝チームのキャプテンの孫が主人公という設定で、氷見市民にとって、馴染みが深く、共感の持てる内容でした。第一巻の発売日、氷見の大型書店「明文堂」で山積みになった『送球ボーイズ』は、1日で完売しました。春中ハンドなどでハンドボールを支える多くの市民に、ハンドボールに関わる喜びと誇りがもたらされた結果だと感じています」とハンドボールでまちづくりを行ってきた手応えについて語ってくれた。

ハンドボール漫画の可能性

 「スポーツ漫画の読者って、その競技をプレーしていた人か、単純に青春モノが好きかの2パターンなんです」と教えてくれたのは、小学館の『裏サンデー』編集部の梅原慧太氏である。

「プレーしていた人が読むだけだと、野球やサッカーの競技人口が多いスポーツが有利になりますが、最近増えているのが、キャラクターを好きになって読む漫画です。僕自身、ハンドボールは知らなかったんですが、初めてネットでフウワイ先生の話を読んだとき、キャラクターがよく描けていたので、彼ならマイナースポーツでもちゃんと読者に面白さを伝えることができると思ったんです」とフウワイ氏に連載を誘った経緯を教えてくれた。


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