2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2016年11月26日

 キャラクターやストーリー、試合内容。それにプレーの監修をフウワイ氏が行っており、編集の梅原氏との打ち合わせやサカズキ氏との確認などを経て、毎週原稿ができ上がっていく。梅原氏は、「物語性がしっかりとある、骨太のスポーツ漫画として描いてもらいたいと話しているんです」と語り、フウワイ氏は、まちづくりへの寄与もその一つだと話す。「氷見は僕自身思っていたよりも昔からハンドボールが盛んで、ハンドボールが身近にある。そういう舞台に設定できてよかったと思いますし、『送球ボーイズ』が町にとってもプラスになれば、と思います」

『送球ボーイズ』はウェブサイトや『マンガワン』というアプリで見ることが可能。マンガワンは、750万ダウンロードを突破。編集部の梅原氏が「下積み時代がふっとばせるスピード感が売り。連載で失敗して、成長してほしい」と語るように、紙が主体だった漫画界を変える大きなうねりとなっている

 ハンドボールの競技人口は約8万人。「ハンドボールに興味を持ってくれる人って、やっぱり少ないです。売れないと続けられないんですが、やっぱりハンドボールが描きたい。それに、今まで誰も成功していなくって、今も誰もやってないこと。そして、自分が一番詳しいこと。そこにはチャンスがあるんじゃないかって思ったんですよね」とフウワイ氏は逆転の発想で描き続けているという。

 氷見市役所の鎌仲氏は、「これまで、ハンドボール漫画はほぼ皆無だったところに、大手出版社から連載が始まった意義は、ハンドボール界全体にとっても非常に大きいことだと思います」とその効果を話し、ハンドボール唯一の専門誌『スポーツイベント・ハンドボール』編集部の張賢人氏は、「はっきりとは分かりませんが、日本リーグに観戦に訪れた作画のサカズキ氏の周りにファンが集まるなど、ハンドボーラーにとっては、幅広い年齢層に広がっていることを感じます。これから、競技者以外にも広がっていけば」と今後への期待を語った。

 宮﨑大輔という有名トップ選手はいるものの、男子は1988年ソウル、女子は1976年モントリオールを最後に、オリンピック出場から遠ざかっていることも、ハンドボール人気が高まりづらい状況を生み出している。ローティーン時代から育成強化し、日本代表を強くするということにも、まずはプレイヤーが増えることが必要である。ハンドボール漫画『送球ボーイズ』が持つ可能性は、新しいスポーツ漫画の確立とともに、競技の強化やまちづくりへと広がりを持っていることが、漫画自体の面白さを増しているように思っている。

  
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