漫画やアニメがスポーツと密接な関係を持っているのは、言わずと知れたこと。多くのJリーガーが影響を受けたと語る『キャプテン翼』や競技人口増加に大きく貢献した『スラムダンク』など、漫画がスポーツ競技にプラスの側面を持つことが分かる。野球やサッカーはもちろんのこと、最近では、バレーボールやテニス、自転車などでもヒット作品があった。そうした中、未開拓だといえるハンドボール漫画が、現在、小学館が運営するウェブ漫画サイトで話題となっている。
日本で唯一の連載中ハンドボール漫画『送球ボーイズ』
スポーツは、漫画のジャンルとして確立しているが、ハンドボール漫画で今まで成功をした例は見当たらない。2作品が単行本となっているが、いずれも2巻までの発刊で連載が終了している。ひとつのハードルである第3巻が11月18日に発売されたばかりの『送球ボーイズ』は、日本で唯一の連載中ハンドボール漫画であり、原作がフウワイ氏、作画がサカズキ九氏という、二人の漫画家による合作である。
原作者のフウワイ氏は、福井県の中学校でハンドボールを始め、社会人でもプレー。働きながら趣味で漫画を描き、フリーの漫画投稿サイトにアップする生活を送っていた。その作品が小学館の編集者の目にとまり、今年の春に漫画家としてデビューすることになった。漫画の舞台は、高校のハンドボール部でハンドボールの町として知られる富山県氷見市に設定した。「地元の福井は、北陸高校が頭抜けて強い印象があり、そういう場所が舞台だと漫画的に盛り上がらないかな、と思いました。それに氷見市には、北信越大会などでは必ず行っていましたし、ハンドボールが強く、ハンドボールに取り組んでいる町だという印象がありました」とフウワイ氏は語る。
甲子園や花園というと、野球やラグビーをプレーする高校生にとっては憧れの地であり、全国大会が開催される場所である。氷見市は、ハンドボーラーの聖地を目指し、平成17年度から春の全国中学生ハンドボール選手権大会(春中ハンド)を開催している。この大会は、中学校の部活チームと地域のクラブチーム両方が参加できる大会であり、11回目となる今年の大会には男子48チーム、女子46チームの計94チームが出場した。 どんな競技でも通常、全国大会では敗退が決まったら、そのまま地元に帰ることが多いと思われるが、春中ハンドでは、せっかく全国各地から集まったプレイヤーたちに、もっと経験を積んでもらおうと、そして氷見市の良さをより感じてもらいたいと、敗退したチーム同士の試合を別会場でセッティングするなどの対応をしている。
(一財)地域活性化センターからの助成金が10回大会となる昨年で終了したこともあり、今年、氷見市は大会を存続させるためにクラウドファンディングを実施。全国から616万円もの寄付が集まったが、地元氷見市民からの寄付が多かったという。氷見市の本川祐治郎市長は、「たくさんのご協力に涙が出るぐらい感謝しています。お金が集まるだけでなく、寄付を通じて大会に関心を持ってくれる人が増えたと思います。これからもっと、春中ハンドを伝説的な大会に育てていきたいと思います」と話している。