奈良の地に平城京が誕生したのは710年のこと。今年はその1300年目の記念すべき年にあたり、奈良市を中心に“平城遷都1300年”を祝うさまざまなイベントが繰り広げられている。4月3日から奈良国立博物館で開催される「大遣唐使展」は、その最大級のイベントの1つだ。
「遣唐使の歴史は遣隋使を含めると300年近く続き、その間、山上憶良〔やまのうえのおくら〕、阿倍仲麻呂、吉備真備、鑑真、空海ら、多くの偉人が海を渡りました。彼らが大陸から持ち帰った先進的な文化、知識、情報は、奈良の都に華麗な天平文化を花開かせ、律令国家としての体制を整えさせることになります。平城京を語るとき、欠かせないほど大きな役割を果たしたのが遣唐使なのです」
と話すのは、奈良国立博物館企画室長の稲本泰生〔やすお〕さん。展覧会では、国内各地から多数の国宝・重文などの宝物、さらに中国・アメリカからも第一級の文化財を集め、さまざまな角度から遣唐使の全容を紹介。大陸文化を吸収して成長・変貌を遂げたわが国の軌跡を空前のスケールでたどる。
飛鳥~奈良時代(7~8世紀) 奈良・薬師寺蔵
左/観音菩薩立像
中国 唐・神龍2(706)年 ペンシルバニア大学博物館蔵
Loaned by the University of Pennsylvania Museum of Archaeology and Anthropology, Philadelphia, U.S.A.
会場は7部で構成されているが、ハイライトは唐と日本の文化を象徴する品々が並ぶ第1部だ。ボストン美術館から二十数年ぶりに里帰りする平安絵巻の傑作『吉備大臣入唐絵巻〔きびだいじんにっとうえまき〕』や、8世紀初めに唐で作られた『観音菩薩立像〔かんのんぼさつりゅうぞう〕』と同時代に日本で作られた奈良・薬師寺「国宝 聖観音菩薩立像〔しょうかんのんぼさつりゅうぞう〕」との夢の共演は必見。また、現存唯一の遣唐使の公文書や密教法具、経典、香木、唐三彩など、遣唐使たちが命がけで海を越えて持ち帰った貴重な品々が会場を埋め尽くす。
「平城京の時代というのは日本が外の世界に目を向け、非常に元気だった時代です。そんななか、世界帝国・唐の先進的な文化をなんとか日本に持ち込み、根づかせようとしたのが遣唐使。展覧会を通して彼らが駆け抜けた時代の熱気を感じ取っていただけたら嬉しいですね」
ちなみに、開催中には大きな展示替えがある。出展情報は奈良国立博物館のホームページで事前にチェックし、お目当ての展示品を見逃さないように気をつけてほしい。
平城遷都1300年記念 大遣唐使展
〈会期〉2010年4月3日(土)~6月20日(日) 月曜休館(ただし5月3日は開館)
*二体の観音像は全期間を通じて公開
〈会場〉奈良市・奈良国立博物館(奈良線奈良駅下車)
〈問〉大遣唐使展 公式HP:http://kentoushi.exh.jp/
奈良国立博物館:050(5542)8600 、http://www.narahaku.go.jp/
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