米国に勝てないと考える中国は、米国に対して非対称戦を仕掛けている。その一つが、衛星破壊兵器である。2007年に初めて実際に衛星を破壊して以降、2013年には、静止軌道衛星を破壊する能力も獲得したと言われる。
これらは、米国のネットワークのクリティカル・ノードの一つである衛星を破壊し、米国の偵察、通信、情報能力の低下あるいは無力化を狙うものだ。DN-2は、米国のGPSや偵察用の高軌道衛星をターゲットにしている。中国は、24基の衛星破壊用ミサイルで、米軍の通信、情報ネットワークを無力化できると豪語する。
しかし、これは、中国にとっての皮肉でもある。今や、中国自身が多くの衛星を打ち上げ、ネットワークを構築しようとしている。中国ができる衛星破壊を、他の国ができないということはない。今度は、中国が開発してきた衛星破壊技術によって、中国の衛星が狙われる番になるかもしれないのだ。
米国とのエネルギー資源開発の主導権争いとしての月開発
中国の宇宙開発は、長足の進歩を遂げている。有人宇宙開発もその一つである。中国の有人宇宙開発も三段階の発展戦略に基づいている。1992年9月21日に決定された有人宇宙開発の「三歩走」発展戦略(921工程)は、1986年に鄧小平氏が指示した「863計画」に基づくものだ。
第一歩は有人飛行船を発射して宇宙を往復する初歩的・実験的段階とされ、神州1号(1999年11月)から神州6号(2005年10月)までがこれに当たる。第二歩は宇宙船と宇宙ステーションのドッキング及び宇宙実験室での短期滞在とされ、第一段階と第二段階に分けられる。第一段階は、神州7号(2008年9月)から神州10号(2013年6月)までで、宇宙実験室「天宮1号」が含まれる。第二段階は、神州11号(2016年10月)と天宮2号による30日間の滞在である。
第三歩は、長期滞在型の「天宮」宇宙ステーションの建設であり、中国は、2022年までに完成させるとしている。2024年に運用を終えるISS(国際宇宙ステーション)に代わって、中国単独の宇宙ステーションだけが宇宙に浮かぶことになる。この有人宇宙開発にしても、その源は1980年代の鄧小平氏の指示にある。現在の各種発展戦略は、1980年代から変わっていないのである。
2004年から開始された「嫦娥工程」と呼ばれる中国の月開発も三段階だ。「無人月探査」、「有人月面着陸」及び「月面基地建設」である。この内、月探査のプロジェクトも、「繞(周回)」「落(着陸)」「回(帰還)」の三段階に分けられている。
第一期(2007年)は、「嫦娥1号」による月面の地形、地質、環境の探査である。第二期(2007~2016年)は、「嫦娥2号」及び「嫦娥3号」による月面無人着陸、月面車「玉兎(2013年12月~2016年8月)」による月面調査である。第三期(2016~2020年)は、2017年に打ち上げ予定の「嫦娥5号」から送り出される月面車等による月面探査及び岩石等の採取であり、これらは回収され、地球に帰還する。