Wedge REPORT

2017年4月5日

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 つまり、現時点で南シナ海沿岸諸国の軍に対して地対艦戦闘に関わる支援・協力を行える組織は、陸上自衛隊以外には存在しない。したがって、南シナ海沿岸諸国の要請に基づいて「いずも」などに陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊が乗艦し、寄港地において現地の軍に対する地対艦戦闘の能力構築支援を行う可能性を完全に否定はできない。この際、南シナ海沿岸国が日本製の地対艦ミサイルを導入すれば、陸上自衛隊はより効果的な能力構築支援を実施できる。

 もちろん、陸上自衛隊が地対艦戦闘に関わる能力構築支援を行うためには、相手国からの要請が不可欠である。また、仮に要請があったとしても、南シナ海沿岸のある国の地対艦戦闘能力を高めることで、他の南シナ海沿岸国の脅威感を高めることがないか、慎重な検討が必要である。加えて、米軍との間でこの地域における地対艦戦闘での連携について協議し、米軍を能力構築支援に組み入れることも重要である。そして、太平洋戦争における日本陸軍の記憶が根強い南シナ海沿岸諸国では、軍が陸上自衛隊と戦闘に関わる協力を行うことへの国民の抵抗感も予想できる。したがって、陸上自衛隊が地対艦戦闘などの戦闘に関わる分野での能力構築支援に踏み込む際には、当該国政府や軍による国民への丁寧な説明が行われ、国民の理解が深まっていることが前提となろう。

陸上自衛隊の海外任務について再検討を

 本稿では陸上自衛隊が南シナ海の平和と安定に寄与するための方策について考えてきたが、陸上自衛隊の最優先の任務は日本本土の防衛であり、それは不変である。しかし、現代は全地球的および地域的な平和と安定無しに日本本土の防衛も成り立たない時代である。陸上自衛隊は5月には南スーダンでのPKOから撤収するが、これを機に陸上自衛隊の海外任務について再検討する必要があろう。その際、日本本土の防衛と海外任務とのバランスを踏まえながら、戦略的な観点から海外任務の地域的、内容的な優先順位を定めることが重要となる。なお、この再検討にあたっては、現有の陸上自衛隊の体制・態勢や予算を前提とすることなく、必要となる体制・態勢の整備や予算増をも含んで検討することが強く求められる。

  
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