テクノロジーによる雇用の破壊が進む
オバマ政権末期のホワイトハウスがまとめた『人工知能、自動化、そして経済』というレポートは、「自動化によって脅かされている仕事は、低賃金、低熟練、低教育の労働者に集中している。これは自動化が賃金をさらに引き下げ、経済的な格差を拡大し、このグループの労働力の需要を縮小させることを意味している」と警告している。人工知能の技術の発達によって自動化が加速し格差がさらに拡大する。
このレポートは、自動運転によって220万人から310万人の雇用が奪われるだろうと予測する。これには比較的高給の超大型トラックの運転手170万人が含まれている。黒煙を吹き上げながら広大なアメリカ大陸を駆け抜ける通称ビッグリグ(BigRig)と呼ばれる超大型トラックが、無人あるいはほとんどの行程を自動運転で走行するようになれば、運転手が休憩のために立ち寄るドライブインも閑散としてしまうだろう。かつてウォルマートが多くの小売店や町工場を廃業に追い込んだとき、小売店や町工場が利用していた、地域のサービスや金融会社なども姿を消してしまったように、雇用の破壊はその周辺にも大きな影響を与える。
そして現時点でのテクノロジー主導経済の勝者は、人工知能を開発するための世界中の知能(人材)を買い漁っている。近年、人工知能はディープラーニングという技術によって飛躍的に進化し、インターネットの次の、あらゆる経済活動で広く用いられる重要なテクノロジー(GPT)になる可能性を帯びてきた。すでに彼らは検索エンジンやソーシャルネットやEコマースを利用するユーザーから収集した、ディープラーニングに必要なビッグデータを所有している。
MIT Technology Reviewの編集者デビット・ロトマンは「1700年代に産業革命が始まって以来、テクノロジーの進歩は仕事の性質を変え、その過程でいくつかの種類の雇用を破壊してきた。1900年にはアメリカ人の41%が農業に従事していたが2000年には2%になった。同様に、製造業に雇用されているアメリカ人の割合は、第二次世界大戦後の30%から約10%に低下した。それは1980年代の自動化の増加によるものだ」と述べている(2013年6月)。そして次は、人工知能によって可能になる新たな自動化がサービス業の雇用をも破壊しようとしている。