2022年12月5日(月)

足立倫行のプレミアムエッセイ

2017年4月14日

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 いずれにしても、私が日本海側の漁港から漁港へとイカ釣り船を乗り歩いていた頃には、こうしたスルメイカ資源と海水温との因果関係はハッキリしていなかった。

 漁獲量の増減はもっぱら乱獲が原因とされ、外国船の取り締まりや集魚灯の光力規制が当面の対策とされていた。

 でも今回の記録的な不漁が、「温暖化の進行に沿った不可逆的変化」(!?)となると、多少は落ち着かない気持ちになってくる。

 近くのスーパーに行ってみた。並んでいるスルメイカの数は少なく、長崎県産のものが1尾400円前後! 確かに、普段の値段よりも2倍以上は高い。

 大きそうなのを1尾購入してきて、さばいた(イカや魚の下ごしらえは私が担当)。

 我が家では、1尾のスルメイカから最低でも3品のオカズを作る。

 まず、肝臓を取り出し、塩を振ってアルミホイルで包み、オーブンで焼く(酒の肴として絶品。フォアグラを凌ぐ)。

 胴体(外套)の中央部は、皮を剥いで、縦に細かく包丁を入れて「イカそうめん」(酒の肴として絶品。即席函館朝市)。

 そして、残りの胴体と腕(ゲソ)、鰭(ミミ)は、焙ってもいいが、通常は煮付けにする(大根と煮てもいい。お袋の味)。

 高タンパク、低カロリー。冷凍に強く、和・洋・中華、何にでも合うイカ(スルメイカ)だが、手軽に食べられるうちはやはり刺身中心の和風オカズを頻繁に食べておきたい。

 余談だが、欧米人が『旧約聖書』に従ってイカ・タコを「鱗のない忌むべきもの」(悪魔の魚=デビル・フィッシュ)と考え避けているのは、もったいない(ありがたい?)。

 イカ刺しで一杯やりつつTVで横綱・稀勢の里の土俵を見る(土俵中央には鎮物として洗米・塩・昆布・勝栗と共にスルメを加えた5品が埋めて奉納してある)。これぞ、イカ好きな日本人の真骨頂であろう。

 〈魔魚食らうよくぞ日本(やまと)に生まれけり〉

 ……ナショナリズムの甘美な高揚感は、昨今この程度に止めておきたいと思う。

  
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