AIはシンギュラリティの夢を見るか?

2017年7月4日

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 最近、アップルのHomePod、アマゾンのEcho、そしてグーグルのHomeなどのスマートスピーカーが話題になっています。

 スマートスピーカーを使って、ユーザーはクラウドの音声アシスタントと会話することができます。音声認識と自然言語処理をクラウドで行うのか、その一部をスマートフォンやスマートスピーカーのようなエッジ側が担うのかは、各社がパフォーマンスとコストの兼ね合いを試行錯誤している段階ですが、他社のサービスと連携するプラットフォームはクラウド側に移って行くと思われます。アマゾンのクラウドの音声アシスタント(Alexa)と連携する、スキルと呼ばれる他社のウェブサービスの数は増え続け、すでに6月には1万2000を超えています。

 例えば、アマゾンのEchoから、ドミノピザの注文をAlexaに頼むことができます。でも、「アレクサ、バッファローチキンとフィリーチーズステーキ、それから今日はパシフィックベジーもお願い」という訳にはいきません。ちゃんとルールを守って、「アレクサ、ドミノにいつもの注文をして」と言わなければならないのです。「いつもの注文」は、あらかじめパソコンやスマートフォンから設定しておきます。

 他社のウェブサービスが、クラウドの音声アシスタントと連携するには、そのプラットフォームが提供するAPIに対応する必要があります。APIはサービスのジャンル別に共通の仕様になっているため、サービスごとに固有な設定をすることができません。音声アシスタントがユーザーの意図を理解できても、APIの仕様がボトルネックとなり、それを他社のウェブサービスに伝えることができないのです。それが、音声アシスタントを利用するユーザーの不快感を生む根本的な原因となっています。

 アップルはHomePodの発表の場で、クラウドの音声アシスタントのAPIの公開を表明しませんでした。

 ティム・クックCEOは「我々はホームミュージックを再発明する」と、Siriでコントロールすることができる、AppleMusic専用の高音質なスピーカーであることを前面に押し出しました。それは、アップルの売上の7割を占めるiPhoneというプラットフォームと、そのエコシステムを破壊したくないというジレンマにも見えます。しかし、良質なユーザー体験を実現できない、APIを介した他社ウェブサービスとの連携を回避したというのが、意外に穿った見方なのかもしれません。

 AppleMusicは自社の音楽ストリーミングサービスですから、ボトルネックになるAPIを介さずに、Siriはユーザーの質問やリクエストにこたえることができます。スマートスピーカーにはディスプレイがありませんから、曲やアルバムやプレイリストをブラウズして選んだり、聴いている曲をタップ操作でお気に入りに登録するといったこともできません。Siriとの自然な会話の中で、気分に合った曲を選んだり、新しい音楽と出会ったりすることができるようになれば、アップルは、かつてiTunesとiPodで創造したような、まったく新しい音楽体験を提供できるのではないでしょうか。

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