2024年4月19日(金)

AIはシンギュラリティの夢を見るか?

2017年7月4日

 「アシスタントという考え方は封建時代の陳腐なもので、ある意味で女性蔑視で傲慢です。AIは召使いではなく、あなたに寄り添う親しい友人のようなものです」。これは、未来学者ポール・サフォーの言葉です。

 BIインテリジェンスが、音声操作の用途についての調査を行いました。

 あたりまえですが、ほとんどがスマートフォンのタッチパネルでできることです。ハンズフリーのメリットのために車の中でルールに従って話す以外は、確かに「10秒タップする代わりに、スマホと60秒話したいとは思わない」であろうことばかりです。同じ目的を達成するためであれば、「タップ」と「話す」の二つの操作の効率の比較になってしまいます。家電であれば、壁のスイッチ、家電のパネル、リモコンなどの操作との比較になります。 しかし、上位に並んだ「質問」や「検索」や「天気」をみると、「機械との会話」の体験を試しているのではないかという気がします。

 「機械との会話」に、どのような体験を求めているのでしょう。

 それは、アシスタントという秘書や召使いに指示を与えるといったものではなく、親しい友人との会話に近いものだと思います。明確な目的を持たず、効率を必要としない会話です。例えばSiriには、聴いている曲のアーティストのバックグラウンドやちょっとしたトリビア、脱退したメンバーが結成したバンドのデビューアルバム、質問するでもなく口にした言葉から何気なく教えてくれる、そんな音楽好きの友人とのような会話ができたらと無意識のうちに期待しているのではないでしょうか。

 Google Assistantは、検索サービスで溜め込んだ膨大な知識ベースを抱えています。もしかすると、世界中の誰よりも物知りかもしれません。鬱陶しいレコメンデーションなどをするのではなく、愚なるがごとく会話できるようになれば、あなたも機械と会話しようと思うかもしれません。

 スマートフォンの最初の画面には、よく使うアプリのアイコンが並んでいるでしょう。

 画面をスワイプして行くと、そこには使わなくなってしまったアプリもあると思います。それでも、そのアイコンを見てアプリを思い出すことができます。しかし、音声アシスタントのユーザーは、登録したウェブサービスの名前と、その話し方のルールを覚えておかなければなりません。ユーザーはいくつ覚えていられるでしょうか。

 いたずらに、APIを介したウェブサービスの数を競っても、それが音声アシスタントの価値にはならないことは明らかです。むしろ、音楽(ストリーミングサービス)や雑学(知識ベース)などの自社が強みとするサービスを深耕し、音声アシスタントの会話を洗練させ、そのユーザー体験を良質なものにすることに注力した方が、より多くの人の共感を得ることに繋がるはずです。

  
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