2024年5月16日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年8月4日

北朝鮮に眠る資源を狙う中国

 すでにこの連載ページでも触れたとおり(「やりたい放題の北朝鮮に振り回される中国」)中国の民間には強い北朝鮮アレルギーがあり、党中央内部にも北朝鮮を特別扱いすることを「そろそろ止めるべき」との声が上がっているのは事実だが、その反面、中国はもはや6カ国協議が朝鮮半島の問題を解決できるとは考えていない。  

 そのため独自の外交を積極的に展開しながら北朝鮮を経済発展の道へと誘なおうとしている。言い換えればこれは、北朝鮮の経済発展を支援しながら半島の安定を実現し、同時に北朝鮮に対し経済的な影響力を確保し、さらに北朝鮮に眠る資源争奪戦の中でも優位な地位を占めたいという戦略だ。

 これに対し北朝鮮側も、核武装とミサイル実験により「どこからも攻撃されない態勢を整え」、次のステップである経済発展へと歩み出すというタイミングにあり、ここでの利害の一致は歴然だ。

 もっとも北朝鮮経済が急成長の軌道に乗るためには「政治的な安定」という投資家が重視する環境が不可欠なため、現状で見通しに言及することは難しい。

 だがいま、中国が100億ドルの投資を決め、羅津港の開発に乗り出したように北朝鮮の周辺では国を跨いだプロジェクトがいくつも動き出しているのだ。

北朝鮮に触手伸ばすイギリスやエジプト

 日本では大きく報じられることのないそうしたニュースを、少し紹介しておこう。

 国家的な規模で動いているのは、英国系石油会社アミネックスだ。北朝鮮の東海で海底油田の開発について最終合意し、今後具体的な作業に入るという。英「フィナンシャルタイムズ」が伝えたニュースだ。

 アミネックスは今後20年、北朝鮮全土での探査・採掘の権利を独占することとなる。本当に石油が出るか否かは掘ってみなければ分からないが、以前から相当量の石油埋蔵の説が絶えなかった。

 北朝鮮で携帯電話事業を展開するエジプトのオラスコムは、携帯電話加入者が5年以内に数百万人規模になるとの見通しを立てた。

 旧ソ連時代から関係の深いロシアは、北朝鮮が核開発放棄の姿勢を示すことが前提としながらも北朝鮮との間でガスのパイプライン、電力網、鉄道網についての共通化や両国を結ぶネットワークの構築に乗り出す案を提案している。

実はアメリカも……
日本はどうするのか?

 また最も意外なところでは北朝鮮とアメリカの大学間の交流だ。ピョンヤンにある平壌科学技術大学が、すでにアメリカの3つの大学(アーバン大学、テキサス農業大学、ベールロ大学)との学術交流を具体化させるという。


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