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2017年7月20日

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田中秀明 (たなか・ひであき)

明治大学公共政策大学院教授

東京工業大学工学部卒業、同大学院修了。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。1985年旧大蔵省に入省後、内閣官房、外務省等で勤務。2012年より現職。著書は『日本の財政』(中央公論新社)等多数。

規制の効果や影響について定量的な分析がない日本

 規制改革推進会議や国家戦略特区の関連会議では、さまざまな改革が議論されている。農業で進捗が見られるものの、医療や交通などの分野では、岩盤規制に跳ね返されているように見える。岩盤規制を破壊するような改革は、自民党を応援する関係業界の反対に遭うので、選挙を意識して安倍政権は本気で取り組んでいるようには見えない。安倍総理も獣医師会の要望で新設を1校に絞った旨を述べており(5月9日の参議院予算委員会)、既得権益に配慮したわけである。

 規制は単に廃止すればよいというものではなく、国民の安全にとって必要なものもある。重要なことは、その費用と便益の比較考量であり、これは「規制影響分析」と呼ばれている。日本でも、総務省がこの分析のガイドラインを出しており、省庁は規制ごとに規制レビューシートを作成しているが、データに基づく効果や影響の定量的な分析が行われていない。

 安倍政権は規制改革を進めている一方で、規制強化も多い。例えば、この6月から酒類の安売り販売規制が強化されているが、これまでの自由化の流れに反する。政治が零細販売事業者に配慮して酒税法を改正した結果であるが、企業努力で安く販売している業者も規制し、消費者の利益を損なう。

 規制は既得権益を守るためのものではない。規制が必要というならば、規制官庁はデータに基づき「見える化」を行い、その必要性を国民に説明すべきだ。

 ちなみに規制改革に関してベスト・プラクティスを紹介する。オーストラリアの政府機関である生産性委員会(Productivity Commission)は専門家で構成され、政府サービスや規制の評価、各種産業の生産性、競争の中立性などについて、独立かつ透明な分析を行っている。同委員会の役割は、政策立案過程に客観的な情報を提供し、国民の理解を高めることであり、更に持続的な経済成長と国民福祉の向上に寄与することである。

 また、オーストラリアでは、2015年度(7月開始)より、「規制削減プロジェクト」が実施されている。

 これは、企業、NPO、個人や家族が不必要あるいは効果の乏しい規制や手続きを順守することによる負担の削減を目的とし、政府機関は6つのKPI(主要成果指標、例えば規制実施機関はオープンで透明性の高い方法で規制を実施しているかなど)に基づく業績評価と規制影響評価をしなければならない。規制改革による効果には負担減と増があるが、年次報告書では、省庁別・規制別にその金額が示されており、最初の2年で48億豪ドルの純負担軽減を達成したとしている。

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