内閣府は、2014年の消費税率引き上げに伴う景気の一時的な落ち込みを、「景気後退」とは認定しない方針を固めました。これにより、今回の景気拡張期(回復・拡大期)がバブル期(51カ月)を抜いたことが確実となりました。本件については二つの論点から考えてみましょう。一つは「景気拡大が実感できないが、本当にバブル期を超えたのか」という点、今ひとつは「消費税増税時は景気が後退しなかったのか」という点です。
景気は勝手に方向を変えたりしない(初心者向け解説)
景気は、なぜ改善(回復、拡大、拡張)したり悪化(後退)したりするのでしょうか? 経済学の教科書には「在庫循環」「設備投資循環」などと記されていますが、実際に在庫循環や設備投資循環で景気が変動することは滅多にありません。昔は在庫管理技術が稚拙だったので、在庫が景気を動かすほど溜まってしまうことがあったのかもしれませんが、現代では在庫管理技術などが進歩していることもあり、景気は自分では方向を変えないのです。
景気は、一度回復を始めると、そのまま回復を続ける性質があります。「物が売れるから企業が作る。そのために人を雇うと、雇われた元失業者が給料をもらって物を買う」といった好循環が働くからです。もちろん、景気が悪化をはじめると悪循環が始まるわけですが。この流れを変えるのは、政府・日銀による財政金融政策と海外の景気変動です。
景気が悪化すると、政府は公共投資や減税といった財政政策で、日銀は金融緩和で景気を回復させようと努めます。一方で、景気が過熱してインフレが心配になると、緊縮財政や金融引き締めで景気を故意に悪化させてインフレを防ぎます。後者は、バブル崩壊後、一度も行なわれていませんので、知らない人も多いでしょうが(笑)。
政府・日銀が何もしなくても、海外の景気が悪化して輸出が減少したり、海外の景気が拡大して輸出が増加したりすれば、日本国内の景気が方向を変える場合もあります。リーマン・ショックは記憶に新しいでしょう。